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迷いの末に
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話すか、話さないか。
心の中で葛藤が生じる。
話せば僕自身の気持ちは軽くなるかもしれない。
しかし潤には重い話を聞かせることになる。
潤にとっては関係ない話なのに、それで悩ませたくはない。
”待っとるかもしれんよ”
ふと、頭の中でリョウさんの声が蘇った。
”もっちーから話してくれるのを、待っとるかもしれんよ”
今の自分に向けた言葉ではない。
それはわかっているのに、思い出すだけでその言葉は、あの時と同じように僕の胸に響いた。
…何も言わなくても、僕はこの先潤とうまく付き合えなくなるだろう。
話しても話さなくても疎遠になるリスクがあるなら、話して失敗した方がいいかもしれない。
"潤一は、君のことを本当に大事に思ってるみたいだよ"
そう言われた時、心が満たされていく感じがした。孤独感が霞のように薄くなっていった。
大丈夫。潤のことは信頼しても大丈夫だ。
_____潤が聞いてくれるなら、話そう。今まで誰にも言えなかったことを…
受付で薬の処方箋を受け取り、診療所を出ると潤が待っていた。
「薬買うのか?」
「うん…」
隣の薬局に案内され、処方箋を出し薬を買う。
軽くなった財布にため息をつく。
貯金を合わせても、バイトの給料日までギリギリのお金しかない。
「そうだ、母さんが今日夕飯食べていけばって。
ここまできたんだし、食ってけよ」
「え…でもそんな突然家に行ったら迷惑になるよ」
「母さんが呼びたがってるんだから、うちの心配はしなくていいよ。元々今日はうち来る予定だったんだしさ」
…今日を逃したら、しばらく学校は休みで潤には会えなくなる。
休み明けに話すタイミングを掴める自信はない。
「…じゃあ、行く…」
そう言うと、潤は一瞬驚いたような顔をし、直後嬉しそうに笑った。
「お邪魔します…」
「いらっしゃい。ゆっくりしてってね」
潤の家は一軒家で、自分の家のアパートと比べてもしょうがないが、広い家だった。
潤のお母さんは玄関で僕を迎え入れてくれた。
ふと玄関にある下駄箱の上を見ると、そこには小学生くらいの潤と、潤より少し大きい少年、それに潤の両親が写っている写真があった。
少年は潤のお兄さんかな。
「夕飯まで時間あるから、俺の部屋行こうか」
「うん」
潤の後について二階へ上がり、部屋に入る。
少し散らかってるその部屋はある意味潤らしく、潤の匂いがした。
「…えっと…何しよう、あ、何かDVDでも見るか?漫画とかもあるけど…」
「潤、」
そわそわしながら棚を探る潤の背中に声をかける。
「…何?」
話すと決めた。今日、話すと。
この選択が間違っていても、今の僕には最善だと思うから…
「今日のことと、今までのこと…長くなるだろうけど、話しても、いい?」
そう言うと潤はぎこちなく作っていた笑顔を止め、無言で頷くと僕の方を向いて腰を下ろした。
それを確認した僕も潤の正面に座り、静かに口を開いた。
「話は…僕が中学一年生の時から始まるんだ」
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