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暖かい
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「……ん………」
もぞ、と身じろぎして、うまく動けないことに気がつく。
とても心地いい温度に包まれていた。それは人の腕で、誰かと向かい合った状態で抱きしめられている。
「おはよう」
「……れお、さん?」
さら、と髪を撫でられて、ぼくを抱きしめている人が起きていることに気付く。声をかけられて、ぼくを抱きしめている人がレオさんだということに気付く。
「昨日はいきなり廊下で倒れたんだって? まったく、エドガーがあんなに取り乱してるところ、僕初めて見たよ」
「ぼく、この部屋を出たところまでしか覚えてないです」
「あぁ……ヒトって気絶すると、その前後の記憶飛ぶっていうから」
そっか、ぼくは倒れて……迷惑を、かけてしまった。
道端で倒れているのを助けてもらったのに、その恩を返す前に更に迷惑をかけて、情けない。
「そんな泣きそうな顔しないでよ……どうしたらいいかわからない」
情けなさにじわーっと目もとに熱が集まってきて、目の前のレオさんの顔が滲む。
困り果てた顔でぼくのほっぺたとか、頭を撫でてくれる。零れそうになった涙は唇を寄せて飲み込まれた。
「何をそんなに思いつめたのかわからないけど、セシルは何も悪いことしてないよ」
綺麗な顔でそんなふうに微笑まれるものだから、同性なのにぼくの胸はどくんと大きく飛び跳ねる。
そんなことは露知らず、相変わらずレオさんはぼくの顔を撫で続ける。いい加減くすぐったいというか、こそばゆいというか。
「セシル、今度服を買いに行こう。作りに来させるんじゃなくて、自分で街を歩って、気に入ったものを買って。僕の近くにいて」
「まち、を歩く……? ぼく、とレオさんが?」
「うん。二人で、は僕の立場上、無理だけど……これから生きていくには、そんな格好じゃ無理だ。セシルは、生きたいでしょう? 貧民街で僕はセシルの目にとても強い生気を感じたよ」
街を歩く。生きるために必要なものを揃える。レオさんの、傍にいる?
それは……。
「ぼくは、ここに住めるんですか?」
「うん」
「で、でも僕、こんな身分で!」
ガバッといきなり起き上がった僕を、レオさんは特に驚くでもなく自分も起き上がって今度は寝癖を治すような仕草でぼくの頭を撫で始めた。
「そういうこと言う奴は兄上が全部黙らせるよ。身分とか、あの人は大嫌いだから。それに……形は違えど、もうその例外がこの城にいる」
例外。それは……。
「あの、綺麗な男の人のことですか…?」
「綺麗な男……? ああ、うん。多分そうだよ」
やっぱりレオさん、あの人のことになると少し機嫌が悪い。
「そうか……アイツが綺麗、ね。まあ、頷けないことはないけど」
レオさんの目線は扉の外だけど、頭を撫でる手は相変わらずそのまま。ぼ、ぼく……そんなに寝癖ひどいのかな……?
その後もしばらく、ぼくが名前を呼ぶまで、ずっと頭を撫で続けられた。
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