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#33
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唇が離れていく。
それに名残惜しさを感じる。
それは神城も笹本も同じだった。
だが神城は少し冷静さを取り戻した。
そうだ、流されてはいけない。
とにかく今は玄関に向かわなければ…
体が離れた隙をついて笹本の体をすり抜ける。
でもまたすぐに腕を掴まれた。
「どこに行く?」
「どこって……誰か来たから」
「置いていかないって言っただろう」
それはこれとは関係のない話だ。
掴まれた腕を振り払った。
「だからそれは…」
「来た人が誰か…そんなに気になる?」
少しずつ獲物を追い詰める様に距離を縮められる。
「一応…確認しないと」
「確認?そんな事しなくても、誰か分かってるだろう。」
多分、高坂だ。
可能性としたら、それ位しか想像出来ない。
「そんなに気になるの?彼の事。」
「でももしかしたら高坂じゃないかも…」
怖い。
このまま笹本の勢いに負けてしまいそうだ。
負けてしまったら、
自分はどうなるんだろう。
分からない。
怖い。
追い詰められた神城は玄関の扉を背中につけた。
もうすぐそこ、
扉越しに高坂がいるはずだ。
高坂を中に招き入れさえすれば、
とりあえず今だけは逃げる事が出来る。
なのに、笹本はそれを許さなかった。
ドンッという音と共に顔の横に手が置かれる。
更に顎を持ち上げられるとまた唇を塞がれた。
「んんッ…はっ…ん…」
すぐそこに高坂がいる筈なのに、
こんな事をしているという背徳感が、
さらに欲望を煽られる。
笹本も同じで、神城の顔を両手で挟むとより深い口づけに変わる。
誰のとも言えない涎が口の端から顎に伝う。
息が出来ない。
こんなキスをした事がない。
これは一体なんだろう。
神城は酸欠でボーッとする頭で考えていた。
自力で立っていられない。
縋り付くように顔を挟んでいる笹本の腕を掴む。
笹本はそれに気付いて腰に手を回した。
腰に触れるその腕にさえ、
神城は欲情する。
唇が離れて行く。
お互いが荒い呼吸を繰り返していた。
その時また、チャイムが鳴った。
笹本が扉に手をついた時、
多分そこにいるはずの高坂にもその音が聞こえていた筈だ。
怪しく思ったに違いない。
もう一度チャイムが鳴り、
扉がノックされた。
『真日?そこにいるのか?大丈夫か?』
扉越しに話しかけてきたその声はやっぱり高坂だった。
「大丈夫。でもまだ体がだるいから…また今度連絡する。」
そんな言葉で納得してくれるか心配だったが、
高坂は案外すんなりと聞いてくれた。
『……分かった。無理するなよ。』
「うん、ありがとう…」
高坂を部屋に入れないと決めたのは自分だ。
それがどういう意味か、
全く分からないわけでもない。
ただ、この先笹本に溺れてしまうと自分がどうなってしまうのか、
分からないだけだ。
「良かったの?」
今更になってそんな事を聞く。
神城は笹本をずるいと思った。
「なんで…?入れた方が良かったですか?」
少し怒る神城に笹本は微笑む。
「そんな筈がない。おまえが他の男を受け入れるところなんて見たくはない。ましてやこんな……欲情し切った扇情的なおまえを、誰にも見せたくはないんだよ。」
笹本が神城の頬を撫でた。
優しい温かい手。
縋り付く様に神城から頬を寄せる。
「真日……愛しているよ。」
笹本は神城の額にキスをする。
そこからジワジワと、
愛が広がっていく様だった。
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