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6時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、やっと1日が終わったかと思うと気が抜ける。
今日1日極力教室から出ないようにした。もちろんクソモデル対策だ。
ちなみに、昨日僕とあいつの間であった事は誰も知らなかったし、僕の本性について誰も言ってこなかったところをみると、大丈夫そうだ。
「ふぅー」
これから僕の癒しの時間が始まるんだから。早く終われー!
念じながらHRを終え、友達と別れて教室に1人。
もうすぐ時計の針は4時を指す。それは、サッカー部の部活開始時間だ。
教室はグラウンドに面しているため、3階の教室からもよく見える。
あっ!始まった…。
グラウンドに集合し、練習を開始する部員達。そんな中から、僕の目は瞬時に勇くんを捉える。
見間違うはずがない。ずっと…誰よりも見てきたから。
こっそり、気が付かれなように、想いながら…。
イキイキとサッカーをする姿はいつ見ても惚れ惚れしてしまうほどかっこいい。
練習の時もそうだけど、試合になったらもっと輝くんだ。
次期エースだからね。
「…いいなぁ」
勇くんとチームメイトがハイタッチをして、笑い合っている。
その笑顔が羨ましい。
勇くんがいつも隣にいたらいいなぁ。僕を見てくれたらいいなぁ。僕だけに笑いかけてくれたらいいなぁ。
最近あまり話せていないし、勇くんが足りない。
会いたい…触れたい…。
勇くん。どうか、僕を好きになって?
──あいつじゃなくて、僕を……
「泪くん」
「っ!?」
──ガタッ!
一瞬にして現実に引き戻され体が強ばり、僕は立ち上がった拍子に椅子を倒してしまう。
「泪くん。何見てたの?」
嫌でも覚えてしまった声に僕は青ざめる。
クッ…最悪だ最悪だ最悪だっ……こんな時に来るなんて最悪だ!
見られた…外を見ていたところを…。しかもよりによってクソ野郎に…。
僕にゆったりとした足取りで近付いてくるのは、クソモデル野郎。
昨日あんなことしておいて、笑顔で僕の前に現れた。
「お……何のようですか?」
思わず、お前と言いそうになり、言葉を飲み込み言い直した。
他には誰もいない…けれど、誰かが通りがかるかもしれない。
落ち着け…落ち着けよ。
「昨日みたいに騒がないんだ」
「…別に騒いでないですよ?」
僕も無理やり笑顔を作り応戦しながらも、逃げるタイミングを窺っている。
「泪くんさ、ずっと外見てたよね…俺がいる事に気が付かないぐらい夢中で」
「なっ…」
「今の時間は確か…サッカー部がグラウンドにいたっけ」
スッと…笑みを深めたアイツ。でも……。
え…?
誰?
コイツの雰囲気が昨日と違う…。
笑ってるけど、笑ってない。
瞳の奥が真っ暗に見えた。
ゾクリと背筋に寒気が走る。
逃げないと…
そう思っているのに、足がピタリと床にくっついてしまったかのように動かない。
何で!?
ヤバイ!ヤバイからっ!
「まっ、そのことは今どうでもいっか」
呟きながら、ついに奴が僕の目の前で立ち止まる。
無理無理、嫌だ!!
最後の抵抗として、僕は顔を俯け視線を絶対に合わせないようにする。
「あれ?パンチ、してこないの?」
「黙れっ!!」
耳元で吐息を吹きかけながら囁かれ、ゾワゾワと鳥肌が立ち、僕は昨日のように右手で思い切り腹パンをしてやった。
奴のお望み通りの腹パン。
「ふふ、同じ手に2度も引っかかるほどお人好しじゃないんで」
けれど、それは僕の予想に反して奴の左手に捉えられていた。
「は、離せ!クソっ!」
「そんな口調でいいの?」
左手から逃れようとするのに、右手がビクともしない。押すも引くも、全くの無意味。
僕は全力なのに、クソモデルは余裕そうに笑ってやがる。
しかも、本性が出ていると注意まで。ふざけんな!何がしたいんだ!?
「威勢はいいのに力は弱いんだね」
「うるッせぇ!いいから離せってば!」
「やーだ」
そいつは楽しげに僕の左手をも捕まえる。
そして、上から見下ろすんだ。
「ねぇ泪くん」
こうなったら、蹴り飛ばす!!
奴の股間目掛けて右足を振り上げようとした時─
「──痛っ!」
「大人しくしようか」
それよりも早く僕を窓に押し付けた。ガンっと頭と背中を打ち痛みが襲う。
その隙に両手を一纏めにされ頭の上で固定された。
クソクソクソ!!こんな奴に…何でっ…。
悔しくて、ムカついて、怖くて、望んでもない涙が視界を歪める。
「これがギャップってやつか」
見せたくないのに、空いた左手で僕の顎をつかみ上を向かされる。
そしてニヤリと意地悪い笑みを浮かべた。
そして僕は感付く。
こいつっ…どこが優男だ!爽やかだ!
エセ爽やか野郎じゃねぇか!!表の顔は全部偽物で、今あるのが本性か!
「離せよ…嫌だっ…」
キッと睨んでもそいつは黙って僕の顔を眺めているだけ。
「何で…こんなことすんだよ…」
「何でって…決まってるじゃん」
声が嫌ってほど震えて情けない。こんな弱い姿クソモデルに晒すなんて…くっ…。
零れ落ちそうな涙をそいつは優しく掬い上げる。
そして吐息が顔にかかる距離にまで迫り──
「お前が欲しいから」
僕の唇を無理やり塞いだ。
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