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「あっ…」
目のはしに写ったのは、絶体絶命の湊人。
普段は嫌な奴だけれど…これで、懲りただろうか…
目の前で死にそうな人を見殺しにするのは忍びない…と、僕は煌の背中を飛び降りた。
「おいっ、零!?」
煌が声をあげたけれど、煌がくるほどの事じゃない…と僕は振り向かなかった。
「全員で一度に撃つぞ、このガキを…」
「あぁ、もちろんだ」
「じゃあいくぞ」
一度に火を吹く鉄砲と銃。
しかしその弾が目を覆い震える湊人に届くことはなかった。
僕は湊人と男達の間に入り、シールドを作り出した。
「なんだお前!」
「あ…ぁ…ましろ、くん…?」
「…」
おそるおそる目を開き僕を怯えた目のまま見つめる湊人。
だから初めから嘘なんてつかなければ良いのに…
さあ、どうしようか。
周りで銃を構え直す男達を見る。
数は多くは無いが、其れなりに腕がたちそうだ…
「零?乗れ!」
「?…煌…」
ずしゃぁっと僕の前に飛び込んできた煌に乗る。
「あ…ぼく、は…」
がたがたと震えながら置いて行かれるんじゃないかという恐怖に目を見開いたまま湊人が僕を見る。
「お前も乗れ?早くしろ!」
煌の言葉に、僕が腕を引っ張りあげて半ば無理矢理乗せる。
2人分の体重がかかっても、煌の動きはしなやかだった。
走り出した煌を、男達は追ってきた。
当然銃を乱発しながらである。
僕はこまめにシールドを張った…けれど。
ドンッという鈍い音に、僕は思わず振り返った。
すると、獣を倒す専用の銃で撃たれた弾が、煌の尻尾を貫通していた。
煌は一瞬動きを止めただけで、また何事もなかったかのように走り出した。
ぽたぽたと血が地面にシミを作る…
「煌、尻尾が…僕は大丈夫だから煌だけでも安全な場所に…」
「零を安全な場所まで運びたいんだ」
しゅるりしゅるりと人をよけ、煌は上手に進む。
すぐ先方に、桜子達も見えた。
桜子達にも危ないと、伝えようとしたその時。
ドンッと再び鈍い音…。
ぐらっと身体が傾き、煌の背中から投げ出されてしまった。
煌は地面にひれ伏していた。
「煌…?」
後ろ足の付け根を撃たれ、それでも煌は立ち上がろうともがいた。
「零、俺はいいから、早く逃げろ」
煌の言葉が耳を素通りして行く。
…煌が、煌が、僕を乗せてたせいで…
男達は姫川さんや子里くんも含め僕達をずらりと囲った。
呆然としている僕の目の前で、煌にもう一発弾が打ち込まれた。
身体を跳ねさせ、煌は力尽きたように人の姿に戻った。
「そいつには毒が塗ってあるんだ、その狼も後数分の命だぜ?」
ぎゃはは、と口汚い笑いが降って来る。
「煌…」
煌が…煌、が…
…
…許せない…許せない、許せない、許せない許せない許せないっ
「まりも!」
僕の声に反応し、上から箒でまりもが降り立つ。
そのまりもに、僕は自分の白の力を発動し丸くなった力の塊を渡した。
「これで、煌の治療を…僕の力を使い切っても構わない」
「でも、零…っ」
「やれ!まりも」
ぐっと言葉を飲み込み、まりもは頷くと僕の後ろに煌を引きずっていった。
滲んだ血だけが僕の前に広がる。
しゃがみ込んでその血に触れると、当たり前の事ながらまだあたたかかった。
…許せない、よくも、煌を…
ぶわっと周りすべてが闇に包まれた。
僕を中心に、僕たちを囲っている男たちを闇で覆う。
桜子たちも一緒に闇の中へ入ってしまい、ここはどこ?などと言っているが、僕にはそれにかまっているほどの余裕がなかった。
ぶわっと滲み出て来る力。
普段は怒らない僕の、怒りのエネルギー…
この闇の中では、すべてが僕の思い通り。
髪が、瞳が、真っ黒に染まって行くのが自分でわかる。
化粧が剥がれたのも分かったがそんなもの気にしない。
今は、この男達に其れ相応の罰を…
周りを見回しながらがたがたと震える男達を向かって、僕は右手をあげた。
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