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act.1占いを信じると碌な事ない
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目の前の男の言葉に、今朝見てきたニュース番組での占いコーナーを頭の中で再生した。
『今日のあなたは最高にラッキーな日!』
母親と妹がこちらを見てブーたれているが見てみぬふりを決め込む俺。無言でトーストを口に含んでいれば、妹は「あっ!」と時計を見てパタパタとリビングを出て行った。どうやら日直を忘れていたようだ。後ろ姿を見送って、テレビに視線を戻すと、無責任に可愛いアナウンサーは『特別な人に出会えるかも』と営業スマイルを振りまく。『ラッキーカラーは赤!』と言うコメントに学校へ持っていく手持ちのタオルが赤であった事を思い出して眉を潜めた。
占いなんて信じてない、だって大抵碌な事ないのだから。
工業高校って言ったら学校全体の割合が大体男だ。その中には少数女子も居るが、学年に片手の指で数えるぐらいしかいない学校の方が多いだろう。クラスの悪ノリな男同士の絡み合いを見てて、お前らそれホモだろ(爆笑)となる笑いの場には嫌でも慣れる。裸で駆け回っても軽く注意されるぐらいで教師陣も言ってもまたやることを知っているからそこまで怒りもしない。実際女子の引く様な目なんて気にすることも工業系に来たら無くなるし、大体の男子が女子との出会いを待ち望んでいながらも、わざわざアクティブに外に出て彼女探しをしようとするのはほんの一握りだ。
つまり、殆どの奴が「非リア充」という事になる。
だから「今付き合ってる人とかいるの?恋人は?」なんて言われたから俺はその一握りではない為「いない」と答えた。間違いないし、否定して他人にエア彼女を作る虚しい奴にもなりたくない。
だがどこで間違った。いや最初からだ。金髪に赤メッシュを入れているどこかの国の王子みたいな容姿のこの美形にホイホイと付いて行った時点で間違いだった。
目の前の男が形のいい唇をニヒルに歪める。「なら」と蕩けるような笑みを浮かべたそいつは、妹が「ルイ」と騒いでいたアイドルの顔と重なった。
「僕と付き合ってくれないかな。ああ勿論、拒否権なんて最初からないから」
フフッと笑うその相手と目があった。表情は完璧な笑顔を張り付けているにも関わらず、俺の引き攣った顔が映る綺麗な赤色は笑っていない様に見えた。
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