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攻防
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「伊吹…そろそろ帰れよ…」
伊吹は毎日のように俺の家に入り浸っている。
俺も毎日のように結婚式の打ち合わせに駆り出されて、家に帰ればいつも伊吹がいた。
まぁ伊吹と話すのは嫌いじゃないけど。
「きょ~すけぇ~」
かなり酔いの回った間延びした声で俺を呼ぶ伊吹。
グラスに入った氷をくるくるとかき混ぜている。
「きょ~すけは~いつ、彼女とわかれるのー?」
「…………」
俺は伊吹の横顔を見つめた。
こいつが俺の前に現れたのはそれが目的か。
うすうす、わかってはいたが。
「…別れないよ。もう結婚する。わかってるだろ?」
そうだ。
もうそこまで迫ってきているのだ。
もう逃げることは出来ない。
「…俺は…結婚してほしくない…」
「……今さらなにいってんだ」
ふっと乾いた笑みをもらし、空いた食器をキッチンへと運んだ。
少し、気持ちを落ち着かせたいという思いもあった。
「京佑…」
「…っ!!」
さっきまで酔ってテーブルに突っ伏していたと思っていた伊吹がなぜか側に立っていて厚い胸に抱き締められていた。
「京佑、好き。俺のとこに戻ってきて」
いきなりの告白になにも言えないでいた。
突然、目の前に現れた時から覚悟はしていた。
でも…。
「…な、に言ってんだよ。伊吹とは六年も前に終わってんじゃん。俺はしあわせになりたいの」
「…結婚して幸せになれんの?」
「それを二人で努力してくんだろ」
「俺と幸せになればいいじゃん」
「なれなかったから別れたんだろ」
もう埒があかない。
こんな頑固だったか?
お互いにそう思っていた。
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