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魔法が解ける前に 9
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~昴side~
告白したのは、俺からだった。
初めて合コンで薫と出会ったとき、俺は周りの美人な女の子達よりも思わず薫の存在に惹き付けられてしまった。
特別可愛いわけでもなく、社交的というわけでもない。
どちらかといえば大人しい印象を受けた。
けれどあの時、『ただ黙々と食べているだけの女』がやけに新鮮に見えた。
俺は案外モテるようで、仲良くなろうと接近してこない女の子が珍しかったせいかもしれない。
ただそれだけのことだった。
きっかけはただ薫の人柄に興味があったから。
ほんの軽い気持ちで告白したのに。
薫が他の男とつるむのが許せなくなった。
薫が身体を許してくれないことに不安を覚えた。
『もう俺のこと好きじゃない?』
その問いの返事を聴くのが俺にはひどく恐ろしかった。
だからなにも感じていないふりを装ってあくまで紳士的に振る舞ったつもりだった。
けれどあの日、俺の歪みきった不安は爆発した。
そして俺は『カレ』の真実を知った。
そう、彼は彼女ではなかったのだ。
俺のもとから去っていく彼を、俺は追いかけることができなかった。
なんというか、今まで慎重に作り上げてきたトランプタワーをあっさり崩されるような気分だった。
普通なら、今までの俺だったら、あんなオカマなんて好きにならなかった。
気づいた時点でもう終わりだった。
それなのになぜだろう。
男だったという事実よりも別れを告げられたという事実の方がかなりショックだ。
俺があのソファで寝転がりながら考えていると、いきなり頭を殴られた。
見ると俺の姉貴、七(なな)が服がいっぱい入った洗濯かごを持っていた。
どうやらかごをぶつけられたらしい。
「・・・いてぇ」
「あ、ごめん」
とくに悪びれもせず口先だけで謝った七はベランダの方へ行くと窓を開けた。
「まったく、洗濯くらいさぁ。毎日とは言わないからちゃんとしなさいよね!これじゃ一人暮らししてたって自立できないわよ」
七の小言は耳にたこができるくらい聞いた。きっといつかこいつは立派な小姑になれると俺は思っている。
「七ぁ・・・・最近旦那とうまくいってんの?」
「はぁ?おあいにく様!新婚夫婦らしくラブラブな毎日よ?あんたの方はどうなの?」
「・・・・・・別れた?うん」
「なんで疑問形なの?向こうが言い寄ってきてるとか?」
「いや、振られたのは俺のほう」
「は!?マジでか!いい気味だわ」
七の言葉に腹が立ったが、同時に振られた現実が重くのし掛かってきてなにも言えなくなった。
俺はうつ伏せになり、こぼれだす涙を拭った。
「昴・・・・・・」
「俺は納得してない・・・」
七は俺の傍まで来ると、しゃがみこんで顔を近づけた。
「本気で好きになったのね・・・」
俺は小さく頷いた。
「別れたくない・・・・・・」
「それ、相手側には伝えたの?」
「・・・・・」
伝えた。確かに伝えた。レイプの未遂という形で。
「・・・納得してないならもう一度会って話してみたらどう?」
「でも会ってくれるか分からない・・・・」
「分からないなら分かればいい」
そう言うと七は俺の頭をがしがしと撫でまくり、洗濯に戻っていった。
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