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#54 自責
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来たのは、選択教室。
あまり使われることがなく、軽い物置のような場所だ。
明良は偶然にも部活で必要な道具を借りていたのをこの教室に返し、事務室に鍵を返す途中で俺に会ったため、入室に必要な鍵を持っていたのだ。
俺と明良は、教室にあったパイプ椅子に座った。
「…ほら、ここならいいだろ。」
「………ん…。」
「……んで、どうしたんだよ。」
明良が俺の頭をタオルでガシガシと拭きながら問う。
でも、俺の口はなかなか開かない。
言いたいことはいっぱいある。
でも、実際何て言ったらいいのかわからない。
それに、明良に言ってもいい話なのかわからない。
「………ぇ、……っと…。」
俺がなかなか言い出せず口籠っていると、自分から言ってやるというように、明良が口を開いた。
「………優のことだろ?」
その言葉にわかりやすすぎるくらい大きく体が反応した。
それが俺の明良への返事となってしまい、明良は「やっぱりか」と言い大きく溜め息を吐いた。
「………はぁ…。……タケ?」
「……………何……。」
「…お前さ、何でもかんでも1人で持つのが好きだよな。」
「………は?」
俺の頭のタオルを取り上げられ、ボサボサになった髪とぐちゃぐちゃの顔が露になった。
「……………荷物とかじゃなくて、気持ちのほうだよ…。………昔からそうやって自分が1番言いたいことを他の人に言わないで溜め込んでるんだよな。」
「…俺、別にそんなことないけど……。」
「溜め込んでる奴はみんなそう言うんだよ、バカが。………それに、どんなに溜めてたらこんなひでぇ顔になるんだよ。自分でその顔見たらきっとビックリするぞ。」
そう言われ、制服の袖で顔を力強く拭った。
明良の言う通り、俺の顔は涙と鼻水でべちゃべちゃだった。
こんなに泣くのは小学校のとき以来かもしれない。
「……ははっ、…ダチにひでぇ顔とか言うなよな…。」
「……………じゃあ、俺の大事なダチを泣かせた優は許されるのか?」
鋭い言葉が胸に突き刺さった。
胸がキリキリと痛い。引き裂かれそうだった。
「………優に何されたんだよ…。」
━━━━━━違う…。
「…………………がう…、違う……。」
「優に何かされたんだろ!?……部活の途中、俺が優に、タケが教室で雑用やってるって言ったら、優が教室に行ったんだよ。…優、今も教室にいるんだろ……?………俺、優んとこ行ってくる……ッ!」
そう強く言い、明良が立ち上がった。
……………………違うんだよ…!
「違うんだよ…ッ!!!」
俺は立ち上がって教室へ向かおうとする明良の腕を掴んだ。
また、涙が出てきた。
「………違うって……?」
「……違うんだ、って…。………お、俺がっ…、俺が…、悪いっ、んだよ…ッ…。」
嗚咽が混ざって上手く話せない。
明良はそんな俺の背中を優しく擦ってくれた。
でも俺はそんなに優しくしてもらえるような奴じゃないんだよ…。
「………俺が、壊したんだよ……。………………俺、…優のこと、傷付けてた…ッ、光のこと、酷いこと言った…ッ!」
「…………光……?光って誰だ…?」
明良のその問いにすら、上手く答えられない。
「……俺っ、俺…ッ!!!」
そのあと、俺は今までのことを全て明良に話した。
優と光のこと。
俺が優に告白したこと。
俺が付き合っていたと思っていた優は優ではなく、光だったこと。
今俺が光に言ってしまったこと。
「……………俺は、俺と優の関係を、守っていきたかったんだ…。……ずっと、このままでいたかったんだ。……でも、そう思っていたはずなのに、俺は…。…………………自分で、優との関係を絶っちゃったんだ…!」
…………………俺が、あんなこと言わなければ…。
「………光のことを知らなきゃよかったんだ…。……香織さんに、聞かなきゃよかったんだ……。」
あの日の俺が、全ての元凶…。
「…………さっきも!優に、あんなこと聞かなきゃよかったんだ…!だから光が出てきたんだ…!」
……俺のせいだ……。
「…………何で俺、あんなこと言っちゃったんだ…。……光に、消えろって言っちゃったんだ……ッ!」
……………………全部、俺のせいだ…ッッ!!!
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