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榛の章5
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四十九院を家まで送り届けて帰ってから2日。
自室で課題を片づけ終わった頃、そろそろ夕食を摂ろうと考えたが料理をする気になれず、カップ麺で済まそうと考え湯を沸かしにガスレンジの前に立った。
雨宮はやかんの底を這う青い炎をボンヤリ見た。入居する時、大家にサービスとしてIHにしてもいいよと言われたが昔から火の揺らぎを見るのが好きだった雨宮は断った。
料理すると美味しい匂いが充満し、水蒸気が部屋を暖める。そうすると、勿論一人なのだが少しだけ家族感が出るのだ。そんな事を考えている自分が虚しくもあるが、どうしてもそうする事で得られる僅かな幸福感が欲しくなる。湯が沸くにはまだ少しかかりそうだ。
雨宮は、これまでの事を思い返していた。
実家のテレビでコンタクトしてきた存在が未来に起こるであろうニュースを雨宮に見せ、そこに何か意図があると思った雨宮は事件を追う事にした。
そこに亡き家族の意思があるのではと思ったからだ。
そして、たまたま入った店で男と出会った。
これから死ぬかもしれない男だ。
彼を救い、犯人を捕まえろという事かと考えた雨宮は彼に触れ情報を集めた。そこから、東京さんこと四十九院へと辿り着いた。
河原で四十九院と出会い殺されかけたが、彼の精神世界に潜る事で、彼の言葉を借りれば蟻という占領者、今の所限りなく犯人に近い人物の影響を受けただけの《触媒の力を持った霊能者》それが四十九院明希だとわかったのだった。
「短時間で影響を受けて戻ってる…って事はない筈だ…」
四十九院はこの街に越してきて3ヶ月。
蟻が四十九院の心を蝕むのにこれだけの時間を要したのだから、2日くらいでどうにかなる筈はない、そう思っていても態度とは裏腹にやはり気になってしまう自分がいた。
あと、1日だ。
やかんから激しく水蒸気が上がり、充分に沸騰したのが分かると火を止めて幾つか買ってあるカップ麺の手近なものを一つとり、課題をしていたテーブル兼机に戻る。
「………。」
四十九院とのやり取りの後、特にメッセージは受け取っていない。今の所、ヒントもない。
わかっているのは犯人は一般人に紛れて暮らしていて、殺害する対象が小さなものから大きくなってゆくだろうという事だけだ。
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