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榛の章10
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いつも、二人きりの食卓。
夫は逃げるように単身赴任。
けれど、私はそれでよかった。やっと明希と二人きりの生活が出来るのだから。
静かな環境。
長閑な風景。
田舎の人達は噂好きだから明希の事はすぐに広まったけれど、どうって事無い。静養に来たのは本当だもの。
ここで、明希が治れば何の問題もない。
越してきた当初は明希の調子は悪かった。
けれど、新しい心療内科の先生に思い切って見せたのは良い判断だった。
帰ってくると明らかに感情の芽生えが見えた。
とても美しい先生で、私の事も気にかけてくれた。
明希はカウンセリングに行きたがらなかった。
あんなに美人の先生なのよ?
なあに?
先生よりお母さんがいいの明希?
馬鹿ね、怖くないでしょう?
大丈夫よ、明希。
胸に抱いて安心させる。
お母さんがそばにいるから大丈夫、大丈夫よ明希。
「母さん、スマホってどこに売ってるの?」
「……え?」
「スマホだよ。俺も欲しいんだ。雨宮も持ってるって。」
現実に引き戻される。
明希とは会話が続かなかった。
こっちが言う事に対して短く反応するだけ。
でも今は違う。
私達は会話をしていた。
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