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銅色の章3
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「ねぇ、ちょっと助けてもらえないかな?」
学校からの帰り道。
施設に帰る道すがら声をかけられた。
振り向くと20代くらいの綺麗な女の人が立っていた。
キョロリとあたりを見回しても自分以外には誰も居ない。
やっぱり自分に声をかけられていた。
鈴木和也は不思議そうな顔で頷き、女の元へ向かった。
地元の人間ではなさそうだった。
ここに来るのは特別介護老人ホームに親を預けた中年夫婦か、子宝に恵まれない裕福な夫婦が極稀に通るくらいだ。
そのどちらにも当てはまらない。
「どうしたんですか?」
「そこの道から来たんだけど、運転してたら気分が急に悪くなって……」
彼女が指差した方向は細い県道だった。約3キロあるこの道は、車が一台通れるくらいの幅しか無く森の中に家が二軒あるだけで殆ど彼等の私道のようなものだった。二箇所だけ車同志のすれ違いの為の退避スペースがあるが、勿論パーキングエリアでは無いからそこに停まる事は出来ないし、それを過ぎるとこの丁字路まで出てくるしかなくなる。
車は今いる場所からは見えない。
どこかで停車したとすれば、30メートル程先の朽ちかけた神社のスペースしかなかった。
「…どこにも停めるとこが無くてね、神社の中に車ごと入って少し休んだんだけど。」
「自分の車?」
「うん。パパに買ってもらったの」
「具合は治ったんですか?」
「うん、もう大丈夫。だけど…枝を踏み込んだのか車が上手く発進出来なくて困っちゃって。もうちょっとって感じなんだけど…後ろから押してくれないかな。」
「いいよ。この道殆ど人は通らないからこの後誰も来ないかもしれないし。」
「ありがとう、優しいね。」
微笑まれ、つられて微笑み返した。
綺麗で可愛いヒトだ。頭も良さそうだ。
働いて苦労してる感じは無いから大学生かもしれない。
それに、自分の車を持ってるなんて家はきっと裕福なんだろう。うちとは大違いだ。
和也は火事の事を思い出した。
真っ赤に燃えるアパート。
自分の家族が住んでいた部屋。
轟々と音を立て燃え盛る様。
あの中に母親がいた。
母親が燃えていた。
火事の話を聞いてすくに駆けつけてくれたおばちゃん。
おばちゃんにしがみついた。
にぃちゃんは他の町にいていなかった。
連れだって歩くとすぐに神社にたどり着いた。
轍に沿って歩きすぐに白い軽を見つける。
和也はしゃがんで車の下の方を覗き込んだ。
ヂヂヂッッ
背中に走った体験したことのない痛みと衝撃。
ダン、と支えていた腕が頽れて横っ面から地面に落ちる。
目だけ動かして背後を見ると優しく微笑んだままの女の手元に青白い電光を放つスタンガンが見えた。
ヂヂヂ
もう一度押し付けられて、
和也は意識を失った。
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