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不言色の章1
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この2日間、カズの情報がないまま中学校と風の子学園を繋ぐ道を何度も歩いた。その辺からカズが顔をだしそうで、絶えずあたりを見て回る。目撃者がいない筈と納得の田舎道。アスファルトの道の両脇には野原か山林しかない。
途中、左に道があって殆ど私道のような県道が一本。
その道を少し行ったところに神社があって、もしやと思い見に行く。勿論カズの姿は無かったし、社殿は何だか荒れかけている。一応社殿の扉を開けて中にカズが居ないか確認する。
…いない。
ガランとした薄暗い空間に、不意に悲しくなり涙が出た。
社殿の階段を降りかけたが、中程で挫けて座り込んだ。
暫くそうしていると、パトロール中の警察官がやって来て声を掛けてきた。不審者にでも見えたかなと思いながら、職務質問を受ける。
俺は赤い目を擦って応じる。
「ちょっといいですかね?こちらで何をされているんですか?」
「行方不明になってる鈴木和也を探してて…正式ではないんですけど、ウチの母が後見人のような感じでちっこい時から面倒見てるんです。カズは弟みたいなもんなので。どっかにカズが残した痕跡があるんじゃないかって昨日から探してるんですけどね…。何も進展しなくて、今、挫けかけてました。」
大の男が泣いてるとこ見られて少し恥ずかしい。けれど、この台詞で警察官の纏っていた棘が取れた気がする。少し労わるような響きが言葉に加わった。
「…そうですか。この辺は人家が殆ど無いので目撃者もおらず警察としても参っているんです。」
「俺も思いました。こんな寂しい所…滅多に人はいないし、カズは家出するようなタイプじゃないんで事件に巻き込まれたんじゃないかって心配で。むしろ、家出で帰ってきてくれればそっちの方が安心です。最近、おかしな事ばかりあるじゃないですか?動物が殺されたり、階段で転落死したり…」
「転落、と言えばちょっと前にここでもあったんですよ。まさに貴方が座っている階段でね。ご近所のおばあちゃんなんですが足を踏み外して。そのおばあちゃん、泣きながら押されたって言うんですよ。でも、こんな場所ですし、押されたと主張するおばあちゃんはその人物を見てないんですよ。」
「それって、…まさかカップルの転落死に関係あったり…?」
カップル転落死の歩道橋はここから近い。
考えてみれば、歩道橋もこの神社もカズの登校ルート沿いと合致する。
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