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島
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この時正直、俺はかすかだが違和感を感じていた。
いくら注意を払ったからと言っても、俺はほとんど見つかる事を覚悟して庭を走り抜けた。
だが屋敷の方からは物音ひとつしない。あまりに静かすぎる。
そんな違和感を感じていた俺は、その後それを上回る絶望を感じることになった。
「・・・海、か?」
門から数分森の中の道を歩いて、突如目の前に広がった光景に驚きを隠せない。
始めは川かと思った、だが鼻孔に侵入した匂いは、間違いなく潮風のそれであった。
「こんな近くに海かよ」
まぁいいか、とにかく海岸沿いを歩いてみよう。
そうして俺はひたすらに歩いた。
時間にしたらどれくらいかは分からないが、とにかくふくらはぎがパンパンになる程度には歩いた。
だが、辿り着いたのは・・・同じ場所だった。
「なんで、戻って来てんだよ」
俺は見覚えのある木に付いた傷をなぞりながら考える。
俺はずっと海を見ながら歩いてた筈だ、同じ場所に戻ってくるわけがない・・・本当は別の場所なのか?でもこの傷・・・いや、こんな傷あてにならねぇな。
俺は違う景色が広がる事を期待して、森の中へと戻って行った。
そして数分後、俺は自分の考えが甘かったことを知った。
見えたのはもう二度と来たくなかったあの屋敷。
ただ、先ほどと違う点が一つ。
俺が乗り越えた門の前に見覚えのある人影が三つあった。
「春、来たよ」
「え、どこ?・・・あ、ほんとだ」
森の中から姿を現した俺を指して驚いた様子も無く三人が見る。
「どうなってんだよ、どこだよここっ!」
「ここは一つの島です。
周囲は約三十キロにわたって何もない海が広がっています。
どうあがいたとしても逃げるのは不可能です。
仮に泳いで逃げられるだけの技術と体力をお持ちだとしても、このあたりの海は温暖で、人間を捕食する種類のサメが多く生息しています。
一頭程度なら分かりませんが、近海で有名になるほどの数が生息していますのでよほど幸運でない限りは捕食されることが必至です」
「わざと・・・逃がしたのか」
「そーそー、何か言っても聞かなそうだったからさー、あ、これ春が考えたんだよ。
頭いいでしょ」
「樹も一緒に考えてくれたよ、細かいところは特に僕わかんなかったもん」
「でももともとを考えたのは春だから、春が凄いの、ね?」
樹が春の頬を愛しそうに撫でながら告げる。
「んー、じゃあ二人とも凄い、じゃだめ?」
「ははっ、良いよ。僕も、春も凄い」
「うん。ねぇ樹、キスして」
「良いよ」
樹が春に啄むようなキスをする。
そして俺は目の前で行われている行為に、今の状況に一切理解が追いつかなかった。
だから、逃げることはできないと分かっていても、身体が勝手に動いた。
「ご主人様、逃げます」
「ちゅっ、んー良いとこなのになぁ」
「樹、また後でしよ」
「はーい、それじゃあ春、先に撃ってみる?」
背後でかすかに不穏な会話が聞こえる。撃つ?
「当たる・・・樹・・・撃って・・・」
「・・・良い・・・」
「ご主・・・射程圏・・・ります・・・お車・・・ますか?」
「・・・の?・・・しく」
「か・・・ました」
何か、何か武器をもってやがる。
撃つとか、射程とか、銃か?でもそんな事ってあんのか?
そう簡単に撃てるもんだとは思えねぇが・・・とにかく森の中を走んねぇと。
それから車って言ってたな、ならここを走り回ってりゃあ入ってはこれねぇだろ。
じゃあその後は?
「・・・」
俺は頭を振ってひたすらに走り続けた。
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