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プロローグ
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関西の閑静な住宅街の一番奥、重厚な大きな門と高い塀に囲まれ、その豪邸は姿を現す。
表札には『嵩原』の文字。
関西でも随一を誇る極道組織、竜童会組長嵩原の拠点がそこにあった。
「はぁ!?今、何て?親父………っ」
モダンでオシャレな家の至る所に、厳つい見張りがウロウロとしている中、広い庭園に面したリビングから、一際大きな声が聞こえてくる。
海外から輸入した、焦げ茶色の高級感漂う革張りのソファに腰を掛け、目の前に座る組長である父親を驚くように見つめる少年…………竜童会若頭、嵩原大和が声の主だった。
明るめで少し長めの茶髪を片耳に掛け、形の良い鼻筋に切れ長の二重、女子ウケが良さそうな、いかにも今時のイケメン。
シルバーのリングやブレスを身に付けて、然り気無くハイブランドの腕時計をし、タイトな黒スーツが良く似合う。
「聞こえへんかったか?関東行ったら、高校へ通え言うたんや」
父親の言葉に呆気にとられている息子とは違い、その名を全国に轟かせる組の長は、冷静な目で我が子を捉える。
濃いグレーのスーツに、チャコールグレーのシャツ、黒のネクタイで引き締めた姿は、極道者と言うよりダンディなmen'sモデル。
大和が父親似だと言える位の端正な顔立ちで、なにより………若い。
大和は、父親が19の時の子。
若くして組長まで上り詰めた実力は、伊達ではない。そして、その父親を追うように、僅か十代で若頭を張る大和もまた、異質を放っていた。
周囲は、言う。………血は、争えない…………と。
「こ、高校て…………今更やで………」
中学の時から、まともに学校へ通わず、悪名高き日常を送っていた大和にとって、『学校』と言う言葉自体、縁がないものだと思っていた。
大和は、父親の言う言葉に、露骨に嫌な顔をした。
「ええか?これからの極道は、頭もいんねん。お前みたいに、度胸と肝の据わった野郎だけやあかんのんや。つべこべ言わんと、卒業証書もろうて来い」
父親でさえ、大和の持つ極道としての本質は、大人の組員相手でも全く劣っていない、ずば抜けたものがある事は認めていた。
将来、必ず組に必要不可欠となる息子に、若い今、少しでも十代らしい経験をさせてやりたい…………父としての僅かながらの思いやりが、そこには隠されていたのだ。
「せやけど………一応、行ったやん。…………1ヶ月」
そんな父親の想いをよそに、大和は微かな望みで食い下がる。
「アホか。あんなん、通った内に入るか。在籍が1ヶ月で、実際通ったんは入学式の1日だけやろ。何抜かしとんのや、往生際が悪いの」
「…………っ………」
懐からジッポを取り出し、煙草に火を点けて一服する父親を横目に、大和の表情はますます曇っていく。
「丁度、向こうには俺の古い知り合いが理事長をしとる学校があってな、お前の事頼んどるんや。理事長以外には、お前の素性は知られてへん。まだ、4月に入ったばかりで日も浅い。しっかり、頭使うて賢うなって来い。…………関東進出の段取りは、側近らに任せとけ。お前の側近は、優秀やからな」
「………ホンマに、本気やねんな………」
既に段取りが整えられた話に、大和は身体をソファへ深く座り直し、天井を見上げ溜め息をついた。
「ああ…………それからな、その高校………えらいボンボン多いねん。お前、こっちにおる時みたいなノリで行ったらあかんぞ?問題起こして、退学なんぞでもなってみい……………破門やからな」
「は……………」
大和の暴れん坊振りを見透かすように、煙草の煙を吐き、父親は止めを刺す。
「………破門…………!?」
極道一直線で突っ走って来た大和の、人生を変える高校生活が、幕を開ける。
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