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興味と気づく距離まで
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「、あの、…っ!!……写真家の逢坂さんですよね、っ!!!?!ファンなんです!!!っ」
まだ夏のお昼どき
蝉の声がまだBGMとしてうるさい中、今日もまた帝都大学内をフラフラと写真を撮っていると、一人の生徒と思われる女の子に若干テンション高めで声をかけられた。
よく写真家の顔なんて知ってんな〜〜…と思うけど、しょっちゅう週刊誌に撮られてちゃなんも言えない。
「、ありがとうございます、。そう言っていただけると本当に嬉しい限りです。」
俺の口からはいつもみたいなテンプレのような言葉が吐き出される。
もちろん顔は営業スマイルだ。
「わ〜、、!!本当だったんだ、うちの大学を今、逢坂さんが撮りに来てるっていう噂!!まさか本人に会えるなんて思ってもいなかったです嬉しい〜〜!!!握手してもらってもいいですか、?!?!」
まるで弾丸のように喋る彼女に若干引かれながらも差し出された手を包み込むように軽く握手した。
…、やっぱり噂なってんのか、…笑
いや、これだけフラフラしてればそりゃ、目立ってるかもしれないけど……
「これからも頑張ってください!!あ、そういえば暑いのでこれどーぞ!」なんて言いながらその子は俺にペットボトルの水を渡してタタターっと去って行ってしまった。
……なんだか、嵐みたいだったな、……。
ふと、ペットボトル片手に走り去る女の子をみながらそう思う。
本当に嬉しんでくれてるのか、弾けるような笑顔で俺を見るその顔は、たぶん喋らなくても会話できていた気がする……。
「……、都もあれくらいわかりやすけりゃ良いんだけどなぁ……」
気づいたらふとそうつぶやいていて、その呟きは蝉の鳴き声に消されていく。
ーーー……あの"事件"からほぼ2週間が経った。
直後はフラフラとしていて顔も傷だらけで、いかにも痛々しい感じの都だったが、今では顔の絆創膏も全て取れて、手首だけ包帯を外してないくらいだ。
事件の事も、酒井教授の忙しさもあってか学校側にも生徒側にも未だ全く知られてない状況で、研究室も学校内も前と全く変わらなく穏やかである。
…あ、それからあの都に事を犯したあの金髪野郎は、聞くところによるとあれから一度も学校に登校していないらしい、。
……まぁ、だから安心っちゃあ安心なんだけどね、…
罰はちゃんと受けた方が俺は良いと思うんだけど…。
……そう勝手ながらに考える。
…………そうなのだ。依然と変わらないのだ。
それは都にとってはちょうど良い事なんだろうけど、…俺としては少し、……うん……あれ…だね、…。
いやいや、…だって、あれからの都の俺に対する態度も依然と変わらない。
所詮、あいつにとっての俺は"通りすがりに助けてくれたカメラマン"なのであろう……
それをどこかで悔しく思っている自分。
それが何故だか気にくわない。
、というか、俺の人生においてここまで徹底的に無視された事ねぇんだよな、…
今まで他人のつくる流れに任せて、小さい頃からいつも他より優遇されて。…知らないうちに周りの奴ら全員が媚び売ってきて。
いや、自慢なんかじゃもちろんなくて……むしろ俺はこれがずっと心地悪かったくらいだ。
……まぁ、写真を撮る以上、もちろんドキュメントを撮るから罵声を浴びせられたり、多少の無視を受けた事くらいはあったけど、…都みたいな心の底から近寄るなという威圧感を持った静かな無視は初めてだ。
それに対する対抗心なのか反動なのか、都を見ると"その真っ白で動かない陶器みたいな顔を崩してやりたい"とか"俺とは会話をしてほしい"とか溢れんばかりの欲望が湧いてくる。
はっきり言って本当に餓鬼だと思う。対抗心や反動で、…本当馬鹿みたいなんだけど、でもしょうがない。
……まぁ、もちろんその中でも一番の欲望は"都の写真が撮りたい"…なんだけどね、。
だって俺、未だにここ最近で一番良い写真はあの都が階段でこけた写真だと思ってるもん
そんな事を相変わらずつらつらと考えながら暑い外を抜けだして涼しい室内へと移動した。
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