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蜂の死骸と不死身の言葉。
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「……昨日までもがき苦しんでいた蜂が一瞬にして死んで、…それで今は姿形すら綺麗さっぱり消えてる………それってよくよく考えたらすげぇ不思議なことだよな、…」
「…………………。」
「……死骸も、……人の死体も同じだ、。……死んだらすぐに消える、。…………、毎日何百万の生き物が死んで…毎日何十万の人が死んでるのに、……その死骸も死体もどこを探しても見つからない、。…すぐに行方の分からないどこかへ消えてしまうんだ。」
「………………。」
「…………でもそれが当たり前。…………でもきっと、…俺は…それだから死んだ後のその死骸に、漠然と"美しさ"を感じるんだ。……」
都がその俺の言葉に、今まで震わせて閉じた唇を小さく開けると、ゆっくり俺をみた。
俺はそれを気にせずに地面に目を向けながら話し続ける。
「……死体をみるとよくわからない感情にならねぇか、?…………容易く言葉になんかできない、…そういう……、」
「………………。」
「…………どこか気づいちゃいけないことに気づいてしまったような、見てはいけないものを見てしまったような、……、曖昧なんだけど、真っ白いシャツに黒いシミが落ちてしまったようなそんな、…強烈な何かが、……。」
「…………。」
「……でも、きっとそれを言葉にしたとしてもまた…それはすぐ死体のように消えてしまう、。………その感情には…そんな…一筋縄じゃない儚さがあるだろ、?
………だからかなぁ、……死体をみると漠然と美しいって感じてしまうんだ、。」
「……………………。」
……相変わらずだ、。
…………相変わらず俺は、……伝えたいことを素直に言葉にできない、
喋るのが苦手だ、…………自分の本心を伝えるのが嫌いだ、………
…………なのに、……どうしてだろう……
……普段、心の奥底に沈んでる感情が、まるで心の蛇口が壊れたかのようにこんなにドバドバとでてくるのは、。
「……美しいって言葉、…俺は他のどの言葉よりも一番親近感が湧くんだ、…。……言葉への不信感や嫌悪感の中でも、……その言葉だけは…感情の一番近くにあると思う、。」
「………………っ、」
普段言葉にしないでずっと心のタンクに貯めていたからだろうか、
一度蛇口が開いた俺の言葉たちはそうキリなく出てきて、ついその感情に口調が熱くなる。
「……だいたい、"美しい"ってなに、?綺麗なものを見た時だけに使う言葉か?……綺麗なものの定義にさえ個人差があるのに、"美しい"の使用例まで固定するなんて甚だおかしい話じゃねぇかっ、……?!」
「…………っ、!」
「…………っもしそんなだったら俺は感情を言葉に置き換えるっていう動作を手放してるよ、、っ、"この感情にはこの言葉で"、なんて嘘だらけの決められた翻訳機で、感情と言葉との間に作為的に壁を作るような事絶対ぇにしたくねぇ、っ、。」
今まで感じてた言葉への苦情。
それが体の中で勝手にフツフツと湧き上がって口から飛び出る、
…あれ、?……俺ってこんなことが言いたかったんだっけ、?
………、でも別に間違ったこと言ってねぇし、別に悪いこと言ってねぇし、……
ーーーー……でも、
どうやら俺は自分自身に熱くなりすぎていたみたいだ
よくよく考えたら自分の感情としか向き合っていなく、隣の都の事なんて今度は俺の方が忘れていた、
「………、合ってるのかは分からない、…っでも全ての言葉は美しいっていう感情の言葉の中に含まれてるだろう、…?!…っだからいつも俺はこうだ、、寝ぼけ眼でみた東雲も、ユグドラシルのような大樹も、カンボジアでみたアンコール遺跡も……それからあの蜂の死骸も、……なんなら父さんの死体だって、……全部言葉にしてみたら美し、ッ…っン"…!!!!!」
自分に熱くなった俺はそう荒く言葉を落とした
……でも、最後の一言を言おうとした瞬間、何者かに思いっきり口を塞がれて、その言葉が声へとならずにそのまま死んだ。
ーーーー………………っは……??……え……?!
一瞬、全く自分の状況が判断つかなかった、
俺の口を塞いだ犯人はこの二人しかいない空間の中でもちろん都しかいなくて、
そんな力お前にあったの?、というくらいの勢いで都はグッッッッと両手を使い俺の口を押し塞いできた為、俺はその力に思わずバランスを崩してしまい都に押し倒されるような形でアスファルトに尻餅をついてしまった。
「…………っ、ン"!!」
その力の強さに口で呼吸する事すら出来ない
……というか、むしろ呼吸をする事すら忘れていた、という方が正しいのかもしれない、
…………自分から一切行動しない都が、急に俺に触れて口を塞いできただけでも驚いたのに、
「…………死は、悲しみでしかない、……、」
なんと都が、……俺の足の間に膝をついて口を塞ぎながら、そう…まるで小さく唸るかのように力強く呟いたのだ。
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