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時雨の誕生日
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ザァァ…
施設の中では、もう児童達は眠りについていて、暗闇に包まれた施設は静かだった。
施設の中の、玄関に近い部屋で、職員はまだ仕事をしていた。
といっても人数はとても少なく、これが全員なのだ。
片手で収まってしまう数の職員は、時雨の夜の雰囲気に滅入りながらも、資料をまとめていた。
「…なぁ、なにか聞こえないか?」
ところで一人の職員は、何かに気付く。
雨音に紛れて、必死な泣き声。
「…これ、赤ちゃんの声?」
「…見てみよう」
彼らは嫌な予感がして、外に出る。
すると、玄関からまっすぐの所にダンボールがあった。
ダンボールを覗くと、なかには、丁寧に毛布にくるまれて、必死で生きる小さな命がいた。
「中に運ぶぞ!」
彼らは、大急ぎでその子を中に入れる。
体は、ダンボールと毛布のおかげで、冷たかったが多少危険はなさそうだった。
ぬるめのお湯につけ、あっためる。
その子はすぐに寝てしまった。
「なんだこれ?」
職員は、1枚の紙を見つける。
湿ってふやけてはいたが、子供の下にあったので読めた。
『もうこの家族でこの子を幸せにはできません。私たちはこれから死にますが、せめてこの子は生かしたいです。勝手なのは重々承知しております。名前はまだありません。どうか、お願いします… 十六夜 真希』
そこから俺の名前は、十六夜 時雨。10月16日生まれの、十六夜 時雨。
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