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まどろっこしい手紙(1)
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「鈴木くんへ
あなたのことが好きです。
入学式の時に一目惚れしました。
私のこと全然知らないと思うけど、よかったら会って話しませんか。
今日の放課後、裏庭で待っています」
手に持ったピンク色のそれを、きちんと折り畳み同じ色の封筒に戻す。
古典の教科書の間に手紙をそっと挟んで、にやける口もとを手で覆いながら靴箱を後にした。
自然に、歩いてるのがだんだん駆け足になる。
ラッラッラッ、
ラブレター!!
ラブレターだよなラブレターだよなうわああああ。
おっ、おれこんなのもらったの初めてなんだけどうわああ…!
階段を踏み外しそうな勢いで上がってなにしてんだろって我に返って慌てて降りて、上履きをばたばたさせながら思いっきり教室に飛び込んで、
「―――おはよう佐倉! ちょー聞いてよ佐倉あ!!」
むだな動きもおまけしてつけて、親友の勉強机を力いっぱい叩く。
親友、こと佐倉はぎょっとして、読んでた文庫本をそのままに、なんだこいつって顔でおれを見た。
「…おはよう。
なに、ビビったー。注目されまくってるよ。
何かいいことでもあったの」
「あったの!
見てこれ見てこれ」
大事にしまった古典の教科書を、ワレモノでも触るかのような手つきで持ち上げ、スッと佐倉の前に差し出す。
さあびっくりしろ!
「古典がなに。
ていうか今日古典ないよ?」
「えっ! うっそ」
「ホント」
「えーじゃあおれ昨日の時間割のまま持ってきちゃったんだな…いやそんなん別にいいんだけど!
中見て中!」
「中?」
書き込むのが嫌いなおれの教科書は、新品同様まっさらだ。
「お前って意味わかんないとこで潔癖…」って呆れる佐倉を促して、教科書をペラペラめくらせる。
ページとページの間、かぐや姫みたいにつつましやかに収まっている封筒を丁寧に取り出すと、
「えっ、コレって…」
佐倉は大きく目を見開いた。
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