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恋敵、現る?!(2)
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『…実はね、俺、フジくんの事が好きなんだ。今日のお泊まりで打ち明けようと思って』
『二人っきりになりたいんだ。…協力、してくれない?』
松野くんの言葉がぐるぐると頭の中で回る。
そんで、そのせいなのか眩暈までしてきた。
胸にはずっしりとした鉛が押し潰してくる。……吐きそうだ。
そんな俺の気持ちとは裏腹に、フジと松野くんは二人でお喋り。
今は学校帰りでそのまま松野くんちに4人で向かっている。そして、お泊まりすることになった。
「……んでねー、って…聴いてるー?」
前を歩く松野くんとフジから目が離せない。
そんな上の空な俺に話を降っていた沖は、少し不満気に口を尖らせた。
「……あ、わりィ……」
固く握りしめた拳に汗が滲む。
当然、沖の話なんて耳に入ってこない。
何時もなら、楽しくて仕方ない沖とのトークが、何でだか乗り気になれないんだ。
見詰めれば見詰める程、前の二人の背中が不安を呼んで、不安の波がゆらゆら、俺の心を掻き乱す。
(押し潰されてしまいそうだ…)
その大きな不安に。
…この不安は、なんだろ?
(フジは、俺以外の奴を好きになるのかな…)
ふっと浮かんできた疑問。
そんな小さな疑問が一瞬にして、俺の心の靄を大きくする。
あっと言う間に俺の心はその靄に包まれてしまった。モヤモヤとした気持ちが、俺の心を覆い尽くす。
つーか、何でアイツ俺のコト好きなワケ?
俺、お前と長年ダチやってきたケドさ、イイ子じゃないし、女のコみてぇに可愛くもねーし。てかオトコなンだけど?…しかも俺は、オトコより女のコの方が断然イインだけど…??
……お前もそーじゃねーの?
もし、お前にそっちのケがあんならさ。
松野くんはスゲー大人っぽいし、頭イイし…。変人ぽいけどさ、男の俺から見てもさ、けっこーカッコ良いと思うワケよ。……お前さ、フジくんよぉ。オトコ好きなら俺なんかより、断然松野くんの方がイインじゃないの…?お似合いじゃん??
(なんで、俺なワケ…?)
グルグル渦巻く。
不安は膨らんで、大きくて、今にも破裂してしまいそう。
思考はねじ曲がって、オカシな方向へとむかってしまう。
嫌な方へ、悪い方へと。
…たけど、ホンキでそんなコト思ってるかって?
ウソだよ。
ホントは全部ウソ。
本当は女のコよりお前の方が良いに決まってる。そう思えてしまう程、俺お前の事、好きだから。…お前が、"男が好き"なんじゃなくって、ちゃんと"俺だから好き"だってコト分かってる。松野くんとフジがお似合いとか皮肉で言っただけ。………お前の隣とか俺以外の奴とか、ヤダ。絶対、嫌なンだ。
俺の悪い部分も、良い部分もきちんと分かってくれてる、理解してくれてる。
全部、まるこど受け入れてくれるのがわかる。
そんなお前だから、俺は、安心してワガママに自由に振る舞えるンだ。
…なのに、如何して俺、こんな皮肉しか考えられないンだろ。天邪鬼な俺は、ホントに素直になれない。
(こンなんじゃ駄目じゃん、俺)
「…どーしたんだよ?ゆーき!」
少し強い口調で、沖に肩を叩かれる。
その時の、沖の顔の近さに、ビクッと身体が強張った。
「……っ、ちか…いっての…!」
ドン!と沖の肩をどついて、距離を離す。
なンだよ、アホ沖!テメーは一々近いンだよ、ドアホっ。
「なんだよ!痛いじゃん!…ったく、顔赤くして、照れちゃってさー?」
軽くどついただけで、沖は大袈裟に肩をさする。軽くじゃねーかよ、ひ弱なの?沖くんは?
そんな俺の心の声なんて御構い無しに、うりうり、とウザったく頬を突っつく沖が、ムカついてしょうがない。
つーか、コイツ、スキンシップ激しくね…?
……やっぱり、前世とか犬なんじゃねーの?
(俺、デッカくて大人しい犬がスキなんだケドなー)
じっと横目で沖を見る。
すると、何を勘違いしたのか、このおイヌサマは目をキラキラ輝かせ、首を傾げながら期待の目線を俺に送り付けてきやがった。
「なになに??俺のこと見詰めちゃって??」
ニヤニヤ、嬉しそーに笑う顔が心底、…いや溜息が出る程、ウザッタイ。
コイツ見てると、冷たくしたくなるのは何でだろ?
「…いやー、ウルセーなぁと思ってさー」
調子に乗らない様に、冷たくあしらってやる。…でも、コイツにはムリなのかもしれない。
「ひゃー!冷たい、クールなゆーきも、可愛いなー!!」
ふりふり、尻尾を降り出すと、そのまま俺に抱き付いてくる始末。勿論、スゲーあの馬鹿力で。……なに?なンなの、お前。マゾなの?Mなワケ…?俺さ、罵る趣味なんて持ってねーよ?お前とSMとかやりたくねーよ?絶対。他当たってくれない?
だけど、文句も言う体力も気力もない俺はだんまり。…ナニコレ。疲れるンだけど。
しっかし、俺…最近、コイツに振り回されてない…?
(つーか、首締まる…)
うえーって舌出してると、チラッと後ろを振り向いたフジと目が合う。
それだけでドキっとする乙女な俺に、少し、嫌気がする。
だけど、直ぐにフジは前を向いてしまった。
……何だよ。何時もなら嫌味な位に、口出ししてくる癖に。
モヤモヤする。
まただ。
…ココロが、なんか、重い…。
まるで霧が掛かったみたいに。
靄が掛かったみたいに。
わかんない。
フジが何を考えてるのか。
本当に俺の事、好きなのか。
…だって、たった一度しか聴いたことがないから。自身がないのも少しあるけど。
ずっとダチだったってのが、大きいからかもしれないけど。
(……安心、出来ないンだよ)
だって、お前はモテるから。
…男の俺から見て、嫉妬するくらい、良いやつだから。
なんで、あの時、『嫌だ』って言えなかったンだろ。
フジが好きなのは俺なんだって、胸張って言える様に、なりたい。
俺は、如何するべきなんだ?
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