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王子サマとお姫サマ
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side フジ
部屋のドアノブに手を掛け、回す。
ガチャッと音を立て扉は開かれた。
しかし、その向こう側に見えたのは無機質な人形の様に整った無表情の、顔。
俺は、無意識に喉仏を動かし、生唾を呑み込む。
少し強ばったような表情と、緊張した声が唇の隙間から零れた。
「…松、野っ…!」
随分早い登場じゃねェの…?
それはまるで俺の行動を予測してたかのように。
松野の瞳は真っ直ぐに俺を見据えていた。
「どこ行くの、とか、そんな野暮ったい事は聞かないけどさ。勝手に契約破棄してもらっちゃ、俺の計画狂っちゃうンだけど…?」
学校とはまるで違う、酷く冷めた物言い。
表情一つ変えず、瞳だけがギョロッと動き俺を見据える。
"穏やかな"松野ォ?誰だよ、ンなこと言ったヤツッ!!
老若男女問わず親切で、人気高い爽やか美青年。
…この野郎ばっかの、学校でも熱い支持をうけてるほど。
他にも外の女子高からも凄い凄い。
頭脳明晰、容姿端麗、運動神経抜群。
なに?ロボットなの?アンタ。
誰にでも親切だから、専属のファンクラブやら親衛隊やら続々とできちゃって。
オマケに今の生徒会長まで熱い支持をするもんだから、生徒会の副会長に抜擢。
時期生徒会長との名も高いらしいとか。
チートキャラじゃね、?
ゆーきや、あの馬鹿沖とは全く正反対な、コイツ。
…まぁ、俺も人の性格どうこう言える立場じゃねぇけどさ、、。
疲れねーの?そんな仮の自分作りまくっちゃって。
にしてもよ、学校とは随分俺の態度ちげーじゃん。
腹黒?ンなキャラは、あのクソ従兄弟のナツノだけでいーっつーンだよ。似たようなキャラ出してんじゃねぇよ、ややこしいんだよ、あのキャラ。
つーか、副会長で腹黒とか、何処の乙女げーだっつンだ。なンンッッもオイシクないんだけど??
使い古されてるっつーんだよッッ!!!!!今時ンなチートキャラだれも求めてねーンだよ!!!!
「……ねぇ、どうでもいいけど人が話してるんだから、下らないモーソーやめてくんない?殺すよ…?」
そんな、俺のゆーきみてーな下らない心のツッコミ劇場を繰り広げているのが全くもってバレバレな考え事を、冷ややかな微笑みでブッチりとぶった斬るコイツ。
(………そーいやコイツ、ヤンデレも備えてるんだった、、、)
勘弁してくれよ。
どんだけ、ゆーきの周りには濃度の濃い奴らが集まるんだよっ、、、。
頭痛と眩暈が同時に起きそう。
「……契約っつたって、俺は最初っからお前としたつもりなんてねーよ、。」
溜息、深く漏れそう。
それをぐっと呑み込む。
こめかみが痛むのか、なんだか頭を抱えたくなるが、少しほぐすように指先で回す。
言い逃れや言い訳なんて、随分と酷く批判されそうだけど。俺は、お前がやる事に目を瞑ると言う意味であの場はやり過ごしただけ。
はなっからテメーの指示に従うつもりなんて、無い。
…確かに、一瞬、考えて揺らいだかもしれないが。
俺は誰かの、"駒"になるつもりなんて、けをともねーってこと。
つーか、お前のやり方っつーのは、俺は全く共感できねぇし、結局、そんなもんはただの、鎖に繋げるのと一緒だろ?お前のやり方に口出すつもりは無いけどさ、お前が俺のやり方に口出すのは、許さねーよ?
(…まぁ、松野が怖すぎてこんなデケェ口、叩けないんだけど、、)
「……ふーん、あっそ。まぁいいや、行きたきゃいけば?」
そんな俺の意思をしってか知らずか。
意外にも責められることなく、妙にあっさりと松野は道を譲る。
その拍子抜けな態度に、小さく目を見開く。
「…は?」
「いや、だから、行けばいーじゃん、あんたの考えはよく分かったよ。…まぁ、協力するなんて上手いこと行くとは思ってなかったし」
開けた扉に寄りかかり、松野は一息つく。
腕を組みながら、チラッと自身の腕時計に目をやりながら俺を見る。
……何なんだよ。
さっきの、あのすげー怖い表情も、言動も、要らなかったんじゃん!!!
松野くん何したいわけ、、、。
怪訝そうな俺の顔を見ると、松野はニヤッと、可笑しそうに笑みを浮かべる。
「……まだわかんないの、?」
満面の笑みで彼は、松野は嗤う。
今度は、大きく瞳を見開いた。
「…ッッ、!!!てめぇッ、まさか…っ、!」
サーッと背中に冷汗が流れる。
ゾワゾワと悪寒にも似た、震え。
「有難う。たっぷりと、時間稼ぎにはなったよ」
綺麗に微笑む、松野。
それは、まるで、愛嬌を振りまく幼子のように。
愉しくて愉しくて仕方ない、とでも言いたげに。
腕時計に視線を向け、彼は囁く。
「ほら、王子サマ。頑張って、アンタのお姫サマ見つけてこないと」
そんなこいつの、やけに耳につく声を背に、俺は走り出していた。
背中越しに追いかけるのは、アイツの愉快な高笑い。
無邪気な笑い声。
頭はなんでか、真っ白なのに、身体だけが勝手に動く。
真っ白な頭にチラついたのは、なんでか、松野の腕時計で。
腕時計の秒針が、カチカチと音を立てるそこの光景だった。
それは、今にも耳元に聴こえてきそうな音。
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