アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
「だぁーもう、なんっでこんなバランス取れねぇのかなー。やんなっちゃうなー。なんで俺こんな不器用?」
『お疲れー』
『お疲れ様です』
『無理すんなよー』
そんな言葉を口々にかけながら、スタッフは皆早々にサロンを後にしていった。
それに『お疲れ様です』とこたえ、皆が帰った後、俺は今日のレッスンでカットしたウィッグを見つめ独りごちる。
最近、どのスタイルを何度カットしても、レイヤーの位置が低くなり、バランスが悪くなるのだ。
いや、多分原因は自分でも薄々気付いている。
タカさんにも前からずっと注意されている“癖”それが原因なのだろう。
「ゆっうと~」
セット椅子に深々と沈むように座り、ウィッグを見つめて考えを巡らせているとタカさんが俺を呼んだ。
「えっ、なんで・・・タカさん帰ったんじゃ?」
「店長から、ゆうとが居残りするって聞いたもんで付き合ってやろうかと。俺様超絶優しくない?」
そう言うと、カット椅子を俺の近くまで寄せ、タカさんが座った。
「さてさてゆうと君、きみの悩みはわかっているよ。勿論、原因も。けっど~口で何回言ってもわかんない奴はもう、実際どんだけ自分が酷いか見てみないとダメだよね。最近のゆうと、超だせぇの。姿勢がほんっと最悪。見るに耐えないレベル。自覚、ある?」
にこにこしながら、話してる内容はすっげー毒舌・・・。
本当に、タカさんは仕事やレッスンに関して一切の妥協を許さないし、普段は緩いくせに人が変わったように辛辣になる。
「・・・なんとなく、原因はうっすらとわかって、ます」
俯いてそうこたえると、更なる追撃を食らう。
「いやいやいや、わかってんなら徹底的にダメなとこ直せよ。てか、どんだけ言ったらその癖直んの?倍、意識しろよ。そんでも直んないんなら、100倍意識して癖を矯正しろ。その癖、直んない限りスタイリストデビューとか無理だから」
・・・あんまり、苛めないで。
心が、折れるどころか砕け散ってしまいそうです。
「・・・すみません」
「謝るくらいなら、その分意識して結果で示せ・・・って、前置きはこのくらいにして、じゃ~ん!!俺様、イイモノを用意しております~」
そう言って差し出してきたのはタカさんの携帯・・・これがどうしたというのだろう。
眉根を寄せ、暫し考える俺に、
「今日のレッスン中のゆうとを撮影してま~す」
と、陽気なタカさんの声が。
「え?」
あまりよく事態を飲み込めない俺に、タカさんは『まあ、百聞は一見に如かず。とにかく見てみろ』と、携帯の動画を再生した。
そこに映っていたのは、俺で・・・タカさんの言うとおり、“超だせぇ、最っ悪の姿勢の見るに絶えない”俺がいた。
「・・・うわ」
あまりの酷さに、思わず俺は嘆息をもらす。
「ね~?酷いっしょ~?営業中もだよ~?ちょっと前まで癖も抜けてきて結構良い感じだったのに、ここ2、3週間くらい本当にヤバい」
ちなみに、その“癖”ってのは、肘が下がることだ。
前にタカさんに注意を受けて、営業中も鏡で時おり確認したりしながら、意識してその癖をきちんと矯正出来たと思っていたのに・・・。
映像の中の俺は、肘も下がりまくってる上に腰までもが曲がってしまっていて、本当に最悪な姿勢でカットをしている。
・・・てか、ちょっと待って。
ここ2、3週間って・・・。
俺は、未だ重く鈍く痛む腰に手を当て、最低最悪の原因に思い当たる。
「・・・タカさんが尿道責めしたり、目隠ししてみたり、変なセックスに明け暮れて俺の体と腰が悲鳴をあげた結果、やっと矯正出来たと思ってた癖がここ2、3週間で壊滅的に悪化した!!!」
「あ・・・」
思い当たる節がありまくりのタカさんは、納得したように何度か頷いたあと、取り繕うように、
「い、いや、例えどんな最悪なコンディションのもとであろうと改善できてこそ、真の矯正と言えるのだよ」
と、目を泳がせながら最もらしいことを言った。
原因の一端を、タカさんが担っていたとはいえ、そのことだけを言い訳にすることは出来ず、俺はそれ以上は何も言わなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
71 / 354