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出会い(優視点)
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三年前から追っていた事件がようやく解決した。
ホッとしたのも束の間、上司から被害者の聞き取り調査に行くよう言われた。
私自身、聞き取り調査は何度も行っているし、初めて話す人とも割りと直ぐに打ち解けられる。
ただ、この事件の聞き取り調査はいつもの聞き取り調査とは違う。
私は、三年前からずっとこの事件の聞き取り調査の担当になっているが、未だに質問内容は定まらず、どんな質問が正解で、どうすれば被害者の方を傷付けずに済むのか良く分からなかった。
質問内容や色々な事を考えている内に、上司から聞き取り調査に行くよう言われた日から三日も経っていた。
聞き取り調査の日を引き延ばす訳にもいかず、質問内容も定まらないままこの事件の最後の被害者に話を聞きに、被害者が入院している病院へ向かった。
今日行くという連絡をしていない事に病室の前に着いてから気付いた。
けれど、どうする事も出来ず、申し訳ないと思いながら、病室の扉をノックした。
暫くして「どうぞ」と言う声が聞こえ、私は「こんにちは」と言いながら病室に入った。
今回の被害者である加藤悠久君は私を見て、酷く怯える様な顔をした。
それもそうだ。あんな事件に巻き込まれた後なのだからと思いながら、私が自分の名前と警察である事を伝えると安心したのか、ようやく笑顔を見る事が出来た。
その笑顔がとても可愛くてドキッとした。
連絡せずに来てしまった事を謝り、今回の事件の説明と質問をしていった。
時々見せてくれる笑顔を見る度にドキッとしつつ、聞き取り調査を終えた私は、お礼を伝え、病室を後にした。
私は、病院を出て警視庁に戻る道中で、あの笑顔をもう一度見たい、また会いたいと無意識の内に考えている自分に気付き、驚いた。
こんな気持ちになったのは初めてだった。
これが、私と加藤君の初めての出会いだった。
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