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お見舞い
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お昼の時間に差し掛かった頃、そういえば……と僕はある事を思い出していた。
今まですっかり忘れてたけど、僕、あの時買った参考書何処に落としたんだろ?
今頃誰かに拾われて使われてたりするのかな?
ま、それでもいっか。
あの本が誰かの役に立ってたら嬉しいなぁ~
そんな事を呑気に考えていた時、お昼ご飯が運ばれて来て、ペロリと平らげた僕は、大舘さんが来るのを待った。
お昼ご飯を食べ終えて少ししてから大舘さんはやって来た。
「こんにちは、加藤君」
「大舘さん!こんにちは」
初めて見るスーツ以外の服装は、大舘さんにとても似合っていて、胸がドキドキした。
(僕、最近、大舘さんの事考えるとずっとドキドキしてるなぁ~もしかして……何かの病気?だから、退院出来ないのかも!?これも先生に聞いてみなくちゃ!!)
「……君?加藤君?」
「あっ、はい!?」
「どうかした?ボーッとしてたけど?」
「あ、ごめんなさい。少し考え事してて……けど、もう大丈夫です!!」
「そう?なら良いんだけど……あ、そうそう。これ約束してたチョコレートケーキ」
「うわぁ。ありがとうございます!!」
「どういたしまして。後、これ」
「ん?何ですかって……あ!?」
「この前、私と一緒に買った参考書。丁度加藤君が拐われた現場に落ちてたから持って来たんだけど、いるかな?」
「はい!丁度、この参考書何処にあるんだろうって考えてたんです。ありがとうございます」
「そっか、なら良かった。入院生活は暇な時間の方が多いと思うから、これでしっかり勉強して」
「はい!!頑張ります!!」
「ハハッ、元気そうで良かった」
「はい!!……………………あの……」
「ん?何かな?」
「質問があるんですけど、いいですか?」
「うん。いいよ」
「今日はせっかくの休みの日で、仕事の話とかしたくないと思うんですけど、僕を拐った二人はあれから何か話しましたか?」
「え?」
「ぼ、僕、話を聞いた日から、ずっと二人の事が頭から離れなくて、あの時、大舘さんから無理に覚え出そうとしても疲れて苦しくなるだけって言われたけど、ずっとモヤモヤが取れなくて、だから………」
「加藤君」
「は、はい」
「あの二人はちゃんと話してくれたよ。加藤君が聞きたいって言うなら、仕事の時間じゃなくても、話す義務が私にはあると思ってる。どうする?聞く?」
「……………はい。聞きたいです。お願いします」
「……分かった」
僕は、あの二人が何故僕を拐ったのか、その真実を知る為に、一抹の不安を心の片隅で感じながら、大舘さんが話す内容に耳を傾けた。
大舘さんから聞いた内容は僕の予想を遥かに越えていてどう受け入れればいいのか分からなかった………
唖然としている僕を大舘さんは少し見つめて、そっと抱き締めてくれた。
震える筈の僕の体は、何故か大舘さんに抱き締められても症状は出ず、僕は今聞いた話を整理する為に、安心さえ感じる大舘さんの腕の中に収まり、暖かい温もりに包まれていた。
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