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頂きます
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「おい…やっぱ昼飯付き合え」
再び桐嶋さんと口を聞いたのは昼休憩で、
俺が近くのコンビニでも寄ろうと会社から出た時のことだった。
仏頂面はそのままに、目すら合わせてくれないが、確かに俺を誘っているようだ。
どういう風の吹き回しなのか。
「え、ちょっとどこ行くんですか桐嶋さ…」
「いーから来い。話がある」
訝しげに思いつつも、言われた通りに着いて行く。
終始無言ではあったが、その目的地に到着するまでは、10分と掛からなかった。
「お寿司屋さん…ですか」
「文句あんのか」
「いえ…」
昼から割と豪勢だな…
俺毎日コンビニ弁当が当たり前なのに。
どうしよう桐嶋さんが毎日この寿司屋に通ってたら。そんな相当な寿司好きだったら。
それで困ることと言えば…
例えばそうだ。
サーモンについてあの何種類かある調理別に細かく熱弁されたらどうすればいいのか。
もしくは嫌がらせにマイナーなネタばかり寄越して来られたら…
あるいは最後までしめ鯖しか食べさせてくれないとか。
うわぁ全部地味にダメージあるってか、大いに困るわ…
そんなだったら絶対嫌なんですけど……
いやまずそんなこと無いと思うけど…。
「おい、何突っ立ってんだ。
…まさか生魚無理なのかよ」
「はっ、い、いや! 好きですお魚!」
な、なんか気遣ってくれたし…!!
どうしようこの人案外、行動が読めないぞ。
それにこの雰囲気だと奢って貰えるっぽいし…これは素直に奢られるが正解なのか、それとも敢えての全額俺持ちなのか、どっちだ!
いや、まぁとりあえずここは大人しく、
けどそれなりの量を、考えて食べよう。
そうしよう、考えながら食べよう、
慎重に慎重に… …
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「わーい、いただきます!!」
脂の乗った鮮やかな赤身、そしてこのシャリの輝きを前にして、
もはや今の俺に桐嶋さんを気にする余地はなかった。
「お前、そんな寿司好きだったのかよ…」
「だから、好きって言ったじゃないですか~
久しぶりだなぁ~」
呆気に囚われながら割った割り箸は盛大に失敗していて、その後わざわざ新しい物に取替えるあたり、飯に対しても完璧主義なんだろう。箸、勿体ないけど。
「そうだ。話って、何なんですか?」
話の内容なんて、わかりきったことを聞いてみると、桐嶋さんはこの温度差に戸惑いながら口を開いた。
「だから…昨夜の、事だが」
「はは。メール、見ましたよ」
「なっ、だったら返せよ!
もう他の奴らには言ったのかって聞いてんだ。……朝から社内の様子が変だ」
や、それはあんたから半端ない不機嫌オーラがだだ漏れてるからだよ。
俺は心の中で突っ込みつつ、笑顔を繕いながら言う。
「やだなぁ、言ってませんよ…
まだ桐嶋さん、僕の気に触れるようなことしてないですもん」
「ッんだと…
何で俺が部下に対して顔色伺うような真似しなきゃならないんだよ」
「そりゃ貴方があんな所であんな事してたからですよ」
「だからそれは言うなって…!
あぁクソ、腹立つなもう…」
寿司ってそんなにガツガツ食べるものじゃないよ桐嶋さん。
やけになってるのか、ネタも確認せずに取って食いしている。
この人にとっちゃあれは、入社史上最大の失態だよアレは。
何せ俺みたいな部下に見つかっちゃったんだから。
「話って、それ確認するだけですか?」
「……いや」
俺の指摘に、やっと箸を止める。
何か言いたそうにしてはいるが、どうも躊躇するのか、悔しげな顔で俺を見詰めるばかりである。
しばらく沈黙が続いた後に、
桐嶋さんは、ボソッと吐き出すように言った。
「……お前は、俺をどうしたい」
「…え?」
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