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交換条件(士郎side)
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目の前では煌牙が手負いの虎さながらに、全身の毛を逆立てていた。
「……そりゃ、何だ」
「枕だ」
見ればわかるだろうと肩をすくめると、
「……テメェ、何考えてやがる」
野生の勘で、何やらよろしくないことが起きようとしていることに感づいたらしい。
声のトーンがいつにも増して、低くなる。
「冷たい手は、誰かが温めてやらないとな」
強引に枕をベッドに並べ、布団をめくって潜り込めば、予想した通りに、思い切り蹴り飛ばされた。
「……っ」
さすがに痛かったぞと、腰をさすりながら、立ち上がる。
「てめぇ、マジか……っ」
怒り以前に、気色悪さが先に立ったらしい。
布団をつかむ手がかすかに震えているのがおかしかった。
「……殺されてぇのか?」
振り上げられた土鍋に、さすがに慌てて、飛びついた。
「それはさすがに、やめてくれ。大惨事だ」
土鍋を奪い、素早く机の上に置いて戻ると、ベッドの前でファイティンポーズを決める煌牙がいた。
体力は落ちていても、揺らめき立ち上る殺気は、大したものだ。
まともにやり合ったら、勝てるかどうか。
当然、ルール無視の戦いになるだろう。
その上、相手は重病人だ。
手加減する分、どう考えてもこちらが不利になる。
「殺されるのはごめんだが、添い寝も譲れない」
「……意味わかんねぇぞ…っ」
「どうしたら、添い寝させてくれる?」
「こんの、クソホモが……!」
なるほど、そういう心配をしたわけか。
「おまえをどうこうしたいとは思っていない。本当に、ただ添い寝するだけだ」
「……死んでも、ごめんだぜ」
「そんなこと言わずに、試してみろよ。人の体温には、究極の癒し効果があるらしいぞ」
ついには煌牙が、やってられるかとベッドを降りて、ドアに向かい歩き始めた。
肩をつかんで止めると、一瞬にして、ひねり上げられる。
「……離せ。離さねぇなら、折る」
キリキリと締め上げられ、痛みにうめきながらも、ここで引いたのでは何も変わらないと、必死に耐えた。
「手術を受けたいんだろ……? なら、この建物の中にいてもらわないと困る……っ…」
不意に煌牙が黙り込む。
「……場合によっちゃ、飲んでやってもいい。それ相応の条件と、交換ならな」
「言ってみろ……」
「……パソコンを一台寄越せ。当然、ネット回線に接続したやつだ」
言いながら、さらに腕を締め上げてくる。
「……内容はこっちに筒抜けになるが、いいのか?」
「……かまわねぇ」
「……っ、わかってると思うが、外部とのやり取りは、原則禁止だ……」
「……飲むのか、飲まねぇのか、はっきりしやがれ……!
「……っ、わかった、飲もう…っ」
ようやく解放された腕を、ため息の中でグルグル回していると、
「……何してやがる? 今すぐ使えるように準備してこい」
容赦のない、冷たい蹴りが襲ってくる。
苦笑して、部屋を出た。
とりあえず、第一関門は突破できたようだ。
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