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部屋に二人きりでもさ
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あなたには、好きなひとがいますか?
俺には残念ながらそんな奴はいないんだけど、代わりにぶっ殺したい奴がいます。
膝でチンコを潰し、うずくまるそいつの鳩尾にグーパンをキメて『ごめんなさい松様お許しください』というまで泣かせたい人がいます。それがなんやかんやあって、そんでまぁ、そういうことになって、あの、その、つまり、…………多分、このワカメが、彼氏、です。
っていってもムカつくことに代わりはないわけで。家の鍵を持って出るのを忘れた今朝の俺の股間を潰したい。そのせいでこのワカメの部屋にこうやって座ってるんだから股間のひとつやふたつ潰れてもしかたねーんじゃねぇの朝の俺…!
ワカメの部屋は異空間。見渡す限りゲーム、マンガ、アニメ雑誌!俺にとってはあんまり良くわかんねージャンルだけど、別に偏見とかはない。ダイジョウブ。
だ、け、ど、さ。
仮にも恋人(笑うとこだぞ)がこうやって自分の部屋にいるのにさ、このクソワカメクソチンゲはアニメ雑誌を捲るのに夢中。俺は終始携帯をいじってる。勿論無言。つまんねぇし、めちゃくちゃ暇だ。ずっと制服で居るからか早くダル着に着替えたい。まじお母さん早く帰ってきてよ、って思いながらチラリとクソワカメの顔を見るけど、雑誌から顔をあげようとしない。ま、いいけどな!今更気使うような仲じゃないし。俺も携帯にもう一度視線をうつした。
「………なぁ、ハナクソ」
「………。返事しねーぞ」
「なんか俺にいうことねーのかよ」
俺がお前になにを言うってんだよバカじゃねーの深海に帰れクソがシネ。意味が良くわかんなくて顔を上げて振り向くと、さっきまでベッドに寝転がってたワカメの顔が間近にあった。俺はベッドを背もたれにして床に座っていたし、ワカメだってさっきまで俺に脚を向けていたはずなのに、いつのまに顔をこっちに向けたんだ。怖、俺考え事してたら周り見えてないかも。顔近い、ムカつくけど、顔だけは…まあ、…認めてやらんでもない。睫毛なげーなぁ、いろ白いなぁ、唇の形綺麗だなぁ、死なねーかなぁ。そんなことを考えていたら、ぎゅむっ、と鼻を摘ままれた。痛い、力加減ってのを知らねーのかこいつ!
「ってーな!何すんだよ!」
「ハッ。ブサイク。お前が鍵忘れるなんてマヌケなことすっから部屋入れてやってんだぞ?携帯ばっか触ってんじゃねーよ、なんかあんだろ」
「んあ?あ、あー。ごめん?…つーか!お前が俺に構わねーから携帯弄ってんだろ!もてなせよバカ!」
「??ッまえはさァ!ウザいね?!ほんっとウザい!」
「いだだだっ!なんでほっぺつねんの?!酷くね?!」
理不尽な暴力だ、ありえない。
俺はなんでこんな奴と付き合ってんだろ、ていうか付き合ってんのか?
…付き合ってんのか?
春、五月、…の、二十日。に、ダサイ告白をされた、はずなんだけど。今年があと一ヶ月ちょっとで終わろうとしてんのに、俺たちの関係はあの日から特に変わらない。
毎日一緒に学校行って、毎日喧嘩して、毎日一緒に帰って、まあたまに…こうやって互いの家でゴロゴロして、んで終わり。
そんな生活をしてるから、周りからは「仲良しだね」だの「オタハナコンビ」だの言われる始末。こいつが俺のことをハナクソハナクソって呼ぶから、あだ名はハナクソで安定しちまってるし、まじで無理、許さない。
大嫌いの反対ってさ、大好き?
なんでもない日が続きすぎてよくわかんなくなっちまってる、けど、今更こいつに彼女ができたりしたら、俺きっと白目剥いて倒れる。
俺は腹くくって、男と、こいつと、付き合ってるつもりなんだけど。こいつはあの日以来、そーいうことは一言も言ってこない。それどころか理不尽な暴力が増えた。鼻つまんできたり、ほっぺつねってきたり、そんな可愛い暴力だけど。あの日からちょうど半年、半年だぞ?
普通のカップルなら手つないだりキスしたり、そこらへんまでは確実に進んでるはずの、…うん、いや、付き合う前にやってたわ。
じゃあ尚更、なんで付き合ってからなんにもないわけ?
てか、ほんとに付き合ってんのか?俺たち。
「んだよ、そんなジッと見んな、カビ生えるわ」
「…なぁワカメ、お前俺の名前覚えてる?」
「覚えてねぇ。ハナクソに名前なんかねーだろ」
「あーーーもうむり!お前もう無理!クビ!失格!」
「なにが!?お前まじでなに考えてんのかわかんねーな?!」
「こっちのセリフですね!?ダメだ帰るわ」
「はぁ?やだけど。」
「な、「なんで?お前鍵もってねーくせに。居ればいいじゃん…って、そういうこと言わせんじゃねーよ!死んで?お願いします」
「そういうこと言ってんじゃねーよ!恥ずかしいんだよ!帰って欲しくねぇなら、その、……構えば。」
顔から火が吹き出そうだ、もう無理。こういうことあんまり言いたくない、俺が構ってちゃんみたいじゃねーかよ、ムカつく、そんなんじゃねーから!暇だから!暇だからだから!
ぷい、と顔を背けると、両側のほっぺを片手でつかむようにして無理やり目が合うようにワカメのほうを向かされる。
ワカメの眉はグッとひそめられていて、口は一文字。その上なんか、怒ってんのか我慢してんのかよくわかんねー顔していた。
「………したい」
綺麗な形をした唇が、薄くひらいた。声ちっさすぎてなに言ってんのかわかんない、て言うか手離せ、顔つるわ!
「あ?なんだって?」
「あーーー!っだから!……キス、してぇなって…、」
俺の顔を掴んでいたワカメの手が、指が、ゆっくりと唇をなぞる。えっ、と、だから、なに?え?キス?
それって聞くことなの?え?わけ、わかんないんだけど、あの、
「すれば、いいんじゃねぇの」
目をあわせられない、恥ずかしい、なんの羞恥プレイだよ!目線だけ逸らす、顔はがっちり固定されてんだからしかたない。
たしかに構ってって言った、けど、まじか。やっぱ俺たち、付き合ってんだよなぁ?
友達とキスはしねぇよなぁ?
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