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なごみと過去10
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(なごみ語り)
「なごみ君もそうやって笑うんだね。びっくりした。」
渉君の淹れたココアを飲みながら、諒が呟いた。雪にまみれた諒は、僕と同じように靴下と靴をヒーターの前に干している。僕は止む気配の無い雪を時おり窓越しに眺めていた。
こんな天気でも患者さんはひっきりなしに来る。みんな長靴を履いていた。僕も買った方がいいかもしれない。
「僕だって笑いますよ。変ですか?」
確かに、あんなに笑ったのは久しぶりだ。笑いすぎで腹筋が痛かった。
「いや……変じゃないけど……あのさ、今度写真撮らせてくれないかな?」
「えっ?何を?」
「君の写真を撮りたい。」
僕の写真……えぇぇ??
確か、諒は空専門だったはずだ。生き物は撮らないと宣言していたのに、僕を撮りたいと……言う。
写真を撮られるのは正直嫌だった。笑顔のまま静止したり、ポーズを取ったりするのが苦手なのだ。
だけど諒が喜んでくれるなら、我慢していいかなと思った。
「あ……あの……」
「師匠に言われたんだ。人物や生き物も撮らないといけないって。ただ空だけを追いかけてるだけでは、無機質な写真になるから、だから……俺の練習だと思って撮らせて欲しい。頼む。」
深々と頭を下げられて僕は困惑した。
なんで僕なんか撮りたいのか、理由も気になる。喉元まで出た言葉を飲み込んだ。
「諒さん、分かりました。いいですから、頭を上げてください。僕で良ければ……」
「いいの?本当に?じゃあ、約束して欲しい。日にちは連絡するから。」
ゆっくりと顔を上げた諒が笑った。
そして、僕達は携帯番号とメールアドレスを交換した。
この日の帰りは、ぼーっとして何度も雪で転びそうになる。諒とたくさん話して、次の約束もして、携帯番号も教えてもらって、明らかにキャパオーバーになっていた。
色々と初心者の僕は、その場で考えるのもままならず、家に帰ってから事の重大さに悶えた。
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