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懐かれ
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「でな」
何度同じ話をすればいいんだろ。
冬休み明けてからほぼ毎日、ずっとこう。
昼休みの度にモジャ男が僕のとこにきて、こうやって話をする。
まぁ、全部自慢なんだけどね。
「聞いてるのか?!」
「聞いてる聞いてる。
それ、すごいのよね」
「だろ?! だからな」
適当に返事しとけばなんとかなるんだよねwww
一緒にいる秀太郎は不服そうw
「時雨のソレ美味そうだな!」
「へー、そう?」
「ひとつくれよ!」
「えっ、ちょっ」
僕が食べようとしてた卵焼き、食べられたし!
それも僕の箸で!
「上手いな!」
「…………そう、市販だけどね」
嘘、僕の手作りだけど、なんとなく嘘ついた。
形とかでバレるかな、とか思ったけど、鈍感だったみたいで、気にしてなかった。
「あとあげるよ。
僕、あまりお腹すいてないし」
「ダメだぞっ、ちゃんと食わないからそんなに細いんだ!
おれのもやるよ!」
「だ、大丈夫っ。
あっ、ちょっと尿意が!
お手洗い行ってきます!」
「じゃあおれも」
「漏れちゃうかな!」
慌ててその場から逃げる。
なに、なになになに、なんなの?!
ストレスなんだけどっ?!
煩いのって嫌いだし、食べ方汚いし、シャツもヨレヨレだし、制服もシワになってるんだよ!
煩いのと下品なのと不潔なのって、僕、大嫌いなのに!
トイレの個室に入ってため息を吐く。
「なんでだろ」
なんで懐かれてんだろ……
僕、何か気に入られるようなことしたかな。
「わかんないよ……」
「どうしたのぉ?」
ふいに声がして、驚いて周りを見渡した。
と言っても個室だから意味ないのに……
外に出ると、アヤノがニッコリと笑って立っていた。
「アヤノか……いや、大したことじゃないんだけどね」
「わかってるよぉ、安曇野でしょお?
オレもあの子苦手ぇ。
自己ちゅーだしぃ、煩いしぃ、我が儘だしぃ、すぐ泣くしねぇ」
「あ、案外ズバズバ言っちゃうんだね……w」
「素直にハッキリとねぇ」
素直にハッキリ……ね。
「にしても、なんで僕が懐かれてるんだろ」
「カッコイイからじゃないのぉ?」
「え?」
「んー?」
「カッコイイって……秀太郎のほうがカッコイイじゃん」
「…………あー、なるほどねぇ」
え……何……?
アヤノは、そっかそっか、とか呟きながら何度か頷いた。
だからなんなの?
「じゃあ、秀太郎も困ってるだろうし、そろそろ戻るね」
「うん、頑張ってねぇ」
バイバイー、と手を振る姿は、女性にしか見えない。
そう言えば、アヤノの本名ってなんなんだろ。
「ただいま」
「遅かったな!」
「あー、うん。
並んでた」
あれ、弁当の中身がない。
食えとか言っときながら食べたな、モジャ男……
空の弁当箱を鞄にしまっていると、ポケットに入れていたスマホから振動+着信音が鳴った。
「誰だろ……」
僕に電話なんて珍しいな。
兄さんだったら無視しよ←
スマホの画面を見ると、知らない番号だった。
「ちょっと電話してくるね」
「なんでだよ!」
なにがだよ。
モジャ男は立ち上がった僕の腕を思いっきり掴んだ。
痛いんだけど!
「ここで電話しろよ!
友達の前で電話できn」
「わかったから手、離して?
痛いよ」
僕は座り直して電話に出た。
「はい?」
『よ、時雨か?
俺だ、多胡だ』
「えっ、あ、先生!
お久しぶりです」
多胡先生、本名、多胡駆 -タゴカケル- 先生は、僕の前の高校の担任だった先生。
生徒会顧問で、兄さんと同級生だったらしい。
最近電話が繋がらなかったからどうしたのかと思ってた。
『悪いな、携帯が壊れてさ。
つい昨日買ったんだよ』
「あぁ、それで。
正月に電話したとき繋がらなかったので、不安になりましたよ」
多胡先生は、僕の中で最高の先生。
一番信頼してるし、僕の一番の相談相手で、兄さんと同級生だってこともあって、凄くよくしてもらってる。
多胡先生は、変わらない明るい口調で、爆弾を落としていった。
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