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大事な話
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ピンポーン、と機械音がなって間もなく、扉が開いた。
「おはよう、会長」
笑顔でそう言えば、会長もおはよう、と返してくれた。
それだけで胸が温かくなるから不思議だ。
会長の部屋にお邪魔するのは二回目。
前は会長、熱出してたから、部屋をじっくり見られなかったけど、改めて見ると、凄くカッコいい。
モノクロで纏めてあって、会長っぽい。
ソファに座らせてもらって、向かい合うようなカタチになる。
暫くの沈黙の後、先に口を開いたのは、会長だった。
「大事な話、って?」
「…………うん。
会長に聞いて欲しくて……
僕の、本心」
視線を上げると、会長が真剣な目をして聞いていてくれた。
「虹が死んで、一年少し経つんだけど、僕の中で、まだ気持ちの整理がつかない部分もあって……
たぶんまだ、虹のこと、好きなんだと思ってる」
そう言った時、会長の目が細められた。
僕は気づいていながらも続ける。
「でも、この学園に来て、会長とか、色んな人にあって、変われたと思う。
皆、優しいから。
でも、ふと留まって、振り返ってみた時、気づくんだ。
全然進めてなかった、って。
でもね、そんな中で、ひとつだけ、確かに変わってることがある」
一度息を吸って、気持ちを落ち着かせる。
「会長のことを、好きになってた」
会長が目を見開いた。
「虹のこと、まだ好きかって聞かれると、好きって答えちゃうけど、それ以上に今は、会長のことが……一ノ瀬ルイのことが、好き」
「篠宮……」
「ごめんね。
こんなこと言ったら、会長のこと、傷つけちゃうかもしれない……
虹のことも会長のことも好き、だなんて、酷い奴だと思う」
「篠宮、オレは……」
会長が、なんだか泣きそうな顔をしていた。
「オレは、篠宮のおかげでたくさん変われたんだ。
篠宮に、ソイツのことを忘れろ、なんて言わない。
……篠宮がどう取るかわからないが、ソイツを好きだっていうことは、思い出にして……」
思い出……
会長と目が合って、違いに見つめ合う。
「オレと、付き合ってくれないか?」
会長の言葉の意味を図りかねて、真剣な目を見つめ返す。
その意味がわかった時、何でか、涙が頬を伝った。
「篠宮……」
「いいの……?
まだ、僕……」
「けど、オレのこと、好きになってくれたんだろ?」
僕が涙を拭きながら頷くと、会長は目を細めて微笑んだ。
「オレも、お前のことが好きだ。
付き合ってほしい」
「…………うん……」
頷いた時、気づくと、会長の腕の中にいた。
温かくて、優しくて、涙は止まらなかった。
虹のことは、思い出に……
ちゃんと、虹と過ごした時間は、思い出の中にある。
忘れないよ。
僕は、忘れないまま、前に進むことを決めたんだ。
いいよね?
幸せになれ、って、虹が言ってくれたんだから。
僕は知らないよ、って言ったもん。
僕も両手を会長の背中に回す。
「会長……ありがと……」
「オレの方こそ」
抱き締め合ったまま顔を上げると、どちらからともなく唇と唇が重なった。
あぁ、僕は本気で会長のこと、好きになっちゃったんだな、なんて。
よく晴れたとある休日、僕達は恋人同士になったんだ。
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