アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もう一人の問題児
-
俺はイタズラに
目にかかっていた彼の前髪を
そっとかきあげると
恭介は俺を睨みながら
手錠で繋がれている手を
サッと彼の手に滑り込ませ
暴れて離そうとする彼の体を
自分に密着するように引っ張りながら
繋いだ手をそのまま
自分の膝の上に置いた
二人の反応が面白すぎて
俺はまたプッと吹き出した
そうか………
ようやく見つけたんだな……
よかったな、恭介
俺の中の恭介に対する拙い感情は
手錠のように堅く繋がれた手と
二人の見えない心の糸によって
淡く揺らめくロウソクの火ように
優しく昇華されていく
「椎名くん」
耳まで真っ赤になっている
可愛らしい彼に向かって
俺は話を始めた
「どのくらいの時間を
二人で過ごしてきたのかは、
然して重要じゃない」
彼は一瞬で真剣な表情になり
俺の目を見ながら聞き入った
「どれくらい、
相手の心に寄り添えるか……
それが大事だと俺は思う」
「…………はい」
「恭介は自分が幸せになっては
いけないと考えている
だが本当は、
誰よりも幸せになることに
貪欲なんだ」
彼は俺が言った意味を考え
コクリと頷いた
「恭介を信じてやってほしい」
「はい」
たった二文字の返事に込められた
力強いその意思に
俺は微笑んで
彼の肩をポンっと一つ叩くと
二人を残し
その場を後にした
―――――これで、
俺の問題は一つ解決した
残る問題は二つ
『倉敷のこと』と
あとは……………――――
俺は大きなため息をつくと
ポケットからスマホを取り出して
電話帳をスクロールしていく
『ラブリー帝』
そう登録させられた名前をタップし
呼び出しのコールを鳴らした
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
96 / 469