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恭介と坂崎【side/―】
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「ふぅん……つまり、
椎名って子は坂崎直人を追って
この学校に来たわけね」
噂好きの女友達2人組を捕まえて
『椎名春馬』の情報を手に入れるため
情報料として
ケーキを奢らされていた美緒は
ケーキには手をつけず
ブラックコーヒーを一口だけ含んだ
「あくまで噂だけどねー
そうそう、知ってる?
その坂崎会長の黒いウワサ話」
「なによ、黒い噂って」
「なんかね、親がけっこう悪どいことやって
財産をせしめたとか」
「あー知ってるそれ
暴力団ともつながりがあるんだって!」
「気に入らない相手を
そいつらに頼んで
海に沈めちゃうとかなんとか?」
美緒は少しだけ驚いたが
肩にかかった
黒く長い艶やかな髪の毛を払って
気を取り直した
「………まるで任侠映画みたいな話ね
ま、あの人は……クズ中のクズ人間だし
間違ってはいないけど」
「ええ?美緒、なんか知ってんの?」
「聞かせて聞かせて~!」
『周防恭介』と『坂崎直人』
二人の姿を頭に浮かべながら
美緒はため息をついた
坂崎の『黒い噂』は
ほぼ間違ってはいない
坂崎直人は
周防家の当主……つまり
恭介の父親になるはずだった男の甥にあたる
相続第一順位である
恭介がいなければ
坂崎の両親が
周防家の遺産を相続するはずだった
坂崎の両親は
遺産相続人である恭介を狙い
数えきれないほどの嫌がらせや
命そのものを
狙うような動きも見せた
周りに危険が及ぶと判断した恭介は
自分と周りの人たちの安全と
『周防』を名乗ることを条件に
遺産を全て放棄した
――――二人の確執は
昨日今日で生まれたものではない
互いに大事なものを奪い合い
互いが絶望の淵を与えあった
いわば因縁ともいえる繋がりは
10年経った今でも
残り火のように燻り続けている
――――美緒は
ステージでの出来事を思い出す
この10年間
坂崎から一方的に嫌みや妬みを言われても
彼をあしらい
時には存在を無視し続けていた恭介が
あんな風に
敵意を剥き出しにするなんて……
「なにか…………あったのかしら」
『え?なになに?』と聞き返す女友達を
笑顔で受け流すと
『ピンポンパンポ――……ン』
校内放送を知らせるチャイムが
教室に鳴り響いた
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