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追う椎名【side/周防 恭介】
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「…………と、言うわけなのよ」
奈津美さんの楽屋で
奈津美さんから
一通りの経緯を説明された俺は
口元を右手で覆いながら
今までの事を振り返っていた
『アンタのせいじゃないか!』
『あんたのせいで人生狂いまくって……』
『先輩ってたしかO型……』
頭の中でチリチリになっていた点が
線になっていく………
つまり、理由はどうであれ
椎名は俺に会いに
同じ高校に来たってこと?
「何だよ……それ…………」
嬉しすぎて
顔が真っ赤になる前に
俺は両手で顔を隠した
あぁ、ヤバい…………
嬉しすぎて
涙まで出てきそうだ………
「すみません……
ちょっと……席外します………」
俺は堪らず
奈津美さんの楽屋から飛び出した
「ま、待って!」
椎名が追いかけてくる……
それだけでも嬉しくて
胸がギュウギュウになる
俺は廊下を曲がり
角で足音が近づくのを待つ
「先輩!……やだ行かないで!」
そう悲痛な声を上げながら
目の前に現れた椎名の腕をグッと掴み
細い体を引っ張って
サラサラ髪の毛に指を滑らし
頭を抱え込み
走ってきた勢いを
自分の中へ流し込むように
少しの隙間もないくらい
力一杯抱きしめた
「………っ…!…」
「何処にも行くわけねーだろ、バカ……」
椎名は小さく震えながら
俺をぎゅっと抱きしめ返した
「黙ってて……ごめんなさい………」
「何で謝んの?
俺、スゲー嬉しいのに………」
「…………嬉……しい?」
「うん………嬉しすぎて、死にそう……」
少しだけ力を緩めると
椎名が顔を上げた
俺は唇を奪うように
強引にキスをする
「…………んっ………」
チュ……っと静かに音をたててから
椎名の耳元で囁いた
「もっと………早く
俺に会いに来ればよかったのに……」
俺の吐息が椎名の耳にかかったのか
椎名の体がビクッと跳ねた
「椎名………ずっと俺のこと
……………好きだったの?」
「………は、……はい…すみません……
自覚したのは、技術室で……ですけど」
うぅ…………嬉しい
「屋上で会ったときも?」
「あの時は………突然でしたので
そういう気分では………
でも……きっと………
あの瞬間も
好きだったんだと思います……」
「そっか…………」
あぁ……今すぐ椎名を抱きたい……
時間…………止まらねーかな……
でも、その前に
ちゃんとカタを付けないと………
「俺、奈津美さんに挨拶しなきゃ……」
「仕事、ですね………」
「……仕事……あぁ、そうだな……」
そう言いながらも
まったく離す気のない俺は
時計の長針が2回動く間まで
無言で
椎名を抱きしめ続けた…………
俺は椎名を名残惜しみながら解放し
手を繋いで
楽屋に戻ると
ドアの前で立ち止まった
「先輩、入らないんですか?」
「………………………」
俺はまた椎名にキスをすると
繋いだ手を離して
深呼吸を始めた
「せん……ぱい?」
俺は
もう一度深く息を吸ってから
ドアをキッと睨み
勢い良く開けて
入るなり
スライディング土下座した!
「奈津美さん!
いや、夏美さんっ!
息子さんを………俺にくださいっ!」
―――渾身の土下座を披露して
後ろで感動しているだろう
可愛い『彼女』を想像している俺を
ツンデレ『彼氏』が
思いきり蹴り飛ばした
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