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「噂通りのラブラブ親子ですねー」
打ち合わせに入った先で、目の前の席に座った男がそう言った。だいたいこの手のイベントだと、そう広くない世界だからたとえ面識がなくても、出会う人物は名前なり顔なり見聞きしたことがあるのが普通だったが、この男は知らなかった。が、噂通りと言うからには、向こうは俺たちのことをいくらかは知っているのだろう。
「あ、東雲先生」
本格的な打ち合わせが始まるまではいいかと、だるいからだを父の肩に預けたままいると、今度は横から女の声がした。
「また雅ちゃん抱き潰したの?」
「もっともっとって煩くてな」
「嘘言うのやめて、父さん」
黒いレザージャケットに真っ赤な口紅が似合うこの美人は、S孃のミソラと言う。父とよくタッグを組んでM嬢を縛り上げているから面識はあるが、俺は女に責められる主義ではないからショーで絡んだことはない。
「彼ね、彰吾。最近巷で結構話題になってるけど、雅ちゃん知らなかった?」
「知りません」
「わぁ、ニコリともしねぇ、噂通りの冷酷美少年」
もはや少年という年齢ではないということは置いといても、まぁこの界隈ではそんな風に呼ばれているのは知っていた。
俺はMではない。むしろどちらかといえば性格はSだと自覚している。どちらかといえば、というのは、別に客の小汚ないおっさんを蹴りあげたり鞭打ったりすることもあるけど、それで快感を得るわけではないからだ。
「ハジメマシテ。俺、蓬莱先生の一番弟子の、成宮彰吾。以後お見知りおきを」
「あぁ、蓬莱さんが最近出来の良いやつが一人いるって言ってたのは、君のことか」
蓬莱さんというのは、父より緊縛歴の長い、国内の緊縛師の中でもなかなか有名な人で、俺も何度か仕事をさせてもらったことがある。
「今回、BL緊縛ってのをね、盛り込もうと思って」
主要メンバーがほぼほぼ揃ったところで、今回の企画者である芹沢という男が言った。
「おっさんに縛られる雅ちゃんは男女問わず人気があるのはあるんだけどね、今回はもっと、女性客を悶絶させようと思って」
「はぁ」
そろそろ仕事の話に入るのかと体を起こそうとすると、芹沢は「そのままでいいよ」と言った。
「散々ヤりましたって雰囲気の雅ちゃんってたまらないねぇ」
「......」
「で、今回は彰吾とボーイズラブ緊縛、よろしく。東雲さんは、女の子いっぱい縛っちゃってー」
ちら、と彰吾の姿を窺う。多分年齢は俺とそんなに変わらないように見える。プロの緊縛師になるにはそれなりの経験がなければ容易になれるものではない。だから必然的に、有名どころの緊縛師はいい年齢の人が多いわけだが、そんな中でこうしてショーに引っ張られるということは、若いながらも腕があるのだろう。
俺が華奢すぎるのはあるが、彰吾は俺より一回りくらい大きく見えた。ガタイが良くて、体つきは龍弥に似ていると思った。顔もまあ、イケメンの部類に入るだろう。短い金髪に浅黒い肌。チャラチャラした風貌は、一見して緊縛師とは思えない。
「お父さんと組めないのは残念だけどー」
芹沢がプログラムの用紙を渡しながら言った。
「仕事なんで」
「家でいっぱい愛してもらっちゃう、と」
「ないですから......そういう関係じゃありませんって、何度も言ってるでしょ」
親子で緊縛してセックスして堂々とそれで仕事してるなんて、まぁ普通のことではないことくらい俺でもわかる。だからこうしてからかわれるのは仕方ないにしても、毎回ともにるとめんどくさい。
「朝まで博之博之って名前で呼んでくれてたのに」
「えっ、何それ、東雲さんガチで息子とラブラブなんですか!えー、だったらやっぱり近親相関ラブラブ緊縛の方が良かったかなー」
余計なことを言いやがって。
ムッとして睨み付けると、場所もわきまえずキスをされた。周囲から野次の声が聞こえて、思わず頭を抱えてしまった。もう、絶対に仕事前には父とはセックスしないと、俺は心に決めた。
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