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「雅ちゃん」
立ち尽くす俺の後ろから優しい声が俺を呼んだ。その声でようやく正気を取り戻すと、冷ややかな笑みを貼りつけて振り向いた。
「この俺にキスされて逃げ出すヤツとか、初めて見た」
「雅ちゃん」
優しい笑顔は、きっとお見通しなのだろう。なんせこいつは、恐ろしいくらい俺のことを見ていて、知っている。
「彰吾」
「大丈夫。俺が側にいるよ」
龍弥でなければ他の誰もいらないけれど、彰吾はそれでもいいよという風に微笑んで、俺を暖かく包み込んだ。
「父さんとこ、連れてって」
「うん」
何も言わない。何も聞かない。優しいこの人を好きになれたらよかったのに。なんで、俺は、どうして。
「雅」
蓬莱さんとさっきの場所にいた父はずっと俺を見ていたらしい。俺の姿を見ると、急に父親の顔をして俺を抱きしめた。
「あれが、雅君の深い闇か」
蓬莱さんが言った言葉に父は何も答えず、そのまま俺を楽屋に連れていった。
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