アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
83
-
アイリス本社ビルは、想像通りの大きなビルだった。出社時間は過ぎているだろうから人が溢れかえっているということはないが、スーツ姿の人が行き交う中で、自分の場違い感は感じざるを得なかった。蓬莱さんに呼ばれて高級ホテルには慣れていたが、普通のオフィスビルなんてこれから先も足を踏み入れることなんてないだろう。若干緊張しつつも受付で名前を言えば、すぐに担当者に取り次いでくれた。
「ミヤビ......!あ、いや、ミヤビさん!」
広いロビーのソファーに座っていると、後ろから声をかけられた。立ち上がって振り向けば、30前後のごく普通のサラリーマンといった、これといって特徴のない男が笑顔で駆け寄って来る。
「あの、初めまして......ではないんですが、俺、あ、いや、私、この度ご連絡させて頂きました、アイリス企画広報部の村岡と申します」
「あ、どうも......」
このどこにでもいそうな平凡な男が、フェティッシュイベントに来ているというのか。正直俺には一切見覚えがないが、村岡さんはとても興奮した様子で名刺を渡してきた。
「会議室にご案内致します。上司の加藤と上田、それから制作会社の方が数名おりますので」
エレベーターに乗せられて、一室へ案内される。その間、村岡さんは俺を知った経緯を熱く語っていた。
「ほんと......あのミヤビが、あ、いや、ミヤビさんが、今目の前にいるとか感無量で......」
「俺なんて、ただの一般人と何も変わりませんけど」
「何言ってるんですか!この世であなたほど美しい人なんていないってくらい、その存在だけでもすごい人です!あ、こちらになります、どうぞ」
あまりに熱く語られても、居たたまれなくなるばかりだった。イベント中や、例えばこの男と二人でプライベートで会っているなら躱すことなんて容易いけれど、このごく一般的な空間ではどんな態度をとればいいのかわからない。
開かれた扉に頭を下げて入る。部屋には6人の男がいて、全員が一斉にこちらを向いた。なんだか、面接でも始まるような雰囲気に、柄にもなく挙動不審になってしまいそうだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
83 / 652