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「今までお世話になりました」
———その穏やかな言葉になんと返せばいいのか、その答えを俺は勤め上げた8年間の中で見つけることはできなかった。
そしてこれからもそれは不可能なのだろう。正解など、きっと何処にも無いのだから。
だから、俺は心のままに彼に声をかける。
それはだたの祈りだった。
「また “今度” 会おう」
特別、宗教に属しているわけでもない。
輪廻転生を信じているのかと、聞かれれば答えは否に近い。
でも、今だけは信じたかった。
彼が救われることを願わずにはいられなかったのだ。
その時が訪れる確証など微塵も無い。
だからその時を信じて、待ち続けよう。
待つ時間は幾らでもある。
俺はきっと、早く死ぬことはできないだろうから。
彼を見殺しにする罪人の自分は、友人や家族の死を見届けるという罰を受けるのだろう。
「…っ、はい…!」
あぁ、なんて眩しく笑うのだろう。白装束に包まれているからか、あらゆる光を反射して眩しいその笑顔はより一層輝いているように見えた。
しかし、その笑顔も白い布で覆われて見えなくなった。
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