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隣の佐藤くん ③
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気がつけば学校は終わっていて帰り道を歩いていた。
駅の近くになったところで、あるものが目に入ってきた。
「…ラーメン屋」
思わずぽつりと呟いたものは、この間佐藤が話していたラーメン屋だった。
あー腹減ってきたな
せっかくだし、食べて行こうかな。
そう思っていると、前方から聞き覚えのある声がした。
「ここのラーメン屋がすっごい美味しんだって!!」
「あはは!太郎ちゃんが言うならそうかもね」
「でしょ!食べ行こうよ内館くん!」
見るまでもなく名前で確信した。
2人は仲良さそうに笑いあって、俺の存在に気づかない。
「…。」
あいつらあんな仲良かったっけ?
学校で話してるところあんま見ないのにな。
しかも佐藤、なんかウッチーに懐いてるし…
頭の中では冷静だったのに、
……いつのまにか体が動いていた。
ズンズンと2人の方へ足早で駆け寄った。
おい、と声を掛けると、
ようやく俺の存在に気づいた2人は目を丸くさせていた。
「む、室井くん…」
佐藤は俺を見て少し後ずさった。
…なにそれ。俺がきた瞬間笑顔から怯えてる顔になってんじゃん。
……気に食わない。
「あれ、湊じゃん!何怖い顔してんの」
いつものようにヘラヘラと笑いかけてくるウッチー。
見慣れたはずの顔が何故か今は心底鬱陶しいと思ってしまった。
「…うるさい。ちょっと佐藤来て。」
「え?!あ…」
強引に佐藤の腕を引っ張ると、困ったような顔をする佐藤。その顔にモヤっとするがとりあえず話をつけたいがため裏路地に連れて行く。
ちらっとウッチーを見てみると、は俺らをにやにやしながら手を振って見送っていた。
なんだあの余裕な顔……むかつく…
「あ、あの…」
「…」
あまり人目のつかない裏路地で手を離し向き合う形で立ち止まった。
何も喋らずに佐藤を睨む俺に焦がれていた佐藤が泣きそうになりながらも口を開いた。
「室井くん、お、怒ってるよね!ごめんね!」
「は?」
突然の謝罪に思わず低いトーンの声で返してしまった。
またビクッと体を揺らす佐藤、
「っ俺、もう室井くんに近づかないから!もう、話しかけないし、室井くんの事諦めるし…えっと、だから不愉快にさせてごめ…っ」
その言葉を口にするとポロポロ涙が溢れた。
佐藤の泣いてる姿に心がズキズキ痛み涙を拭きたくなる衝動が走る。
ああ、やっぱりあの発言は良くなかったか…
放課後の自分の無神経な言葉に、自分に対しての怒りが湧き出る。くそ、我ながら最低なことをした…!
確かに最初は気持ちは受け取れないと思っていたはずだが、いつの間にか佐藤がいる生活に慣れてしまっていた
俺がどんなに適当に返事しても
楽しそうに佐藤は笑っていた
俺のために何かと一生懸命だった
その姿をみてなかったこの三日間、どこか恋しかったんだ…
「俺、不愉快なんて思ってないし。」
「だ、だよね、許してくれる訳な……って、え?」
俺の言葉に佐藤は目をまん丸くして、泣いていたはずの目から涙が引っ込んでいた。
「誰も佐藤に怒ってもいない。」
「え、だってこの間の授業…」
「あれはただ佐藤の行動に疑問があったから聞いたわけで、別に怒ってない」
「……そ、そうだったのか…!…よかったあッ」
佐藤は嬉しそうに笑った
……っ
あれ?佐藤ってこんな、可愛かったっけ…?
自分の感情に戸惑いながらも、表上は冷静に佐藤と目を合わせる。
「じゃあ次は俺の番。」
先程とは違い、佐藤の両腕を軽く掴んだ。
「?室井くん、?」
「何で急に態度がよそよそしくなったの?」
「!そ、それは」
「そんで何であんなウッチーと仲がいいの。」
答えさせまいかってくらいに質問をする。
いや、答えて欲しいけど…。
近かった距離をさらに縮めて目を見つめる。
「っっ待って、室井くん近いよ!」
あ、目逸らされた
恥ずかしそうに顔を赤くして目をそらす佐藤が可愛くて
意地悪したくなる。
「は、や、く」
にやにやしながらも耳元で囁いてみた。
「わ、わかったってば!」
案の定恥ずかしさのピークを超えたのか、俺の胸元を押し距離があいてしまった。
自業自得だがムッとしてしまう。
「…ほ、放課後のこと覚えてる?」
「?俺の席に座ってたこと?」
「っそう…あの時室井くんに気持ちがバレて、人生終わったなって思ったの。
誰だって何にもない平凡な男に好かれるなんて良い気持ちしないでしょ?…だからああ嫌われたんだって」
泣きそうな顔で訴える佐藤を撫でたくなってしまった。
何故かいま触れてしまったら抱きしめたくなる衝動が走りそうで我慢した。
そんな事したら質問に答えられない状態になりそうだ、やめよう
「……あの時は何も考えずに口に出してごめん…。別に前から知ってたし、佐藤のこと嫌ってないから。」
「?!前から?!」
「ばれてないとでも思ってたの?」
カァァアっと擬音が世界一ぴったりなんじゃないかと疑うくらい佐藤はみるみるうちに赤くなっていく。
「う、そでしょ…そんなの聞いてないっ内館くんのやつ…!」
「ねぇそれどういうこと?」
聞き覚えのある名前が出てきてまた距離を縮める。
なんであいつの名前がでてきた?
ていうか、やっぱ親密な関係なの?
「ち、近いってば!!」
ムカムカしながらも赤くなる佐藤が面白くてさらに近づくと、
観念したかのように、口を開いた。
「内館くんに、あの、相談…のってもらってたんだ…」
「なんの?」
「室井くんのこと……」
意味がわからず首を傾げる。
「相談乗るよ?って内館くんに言われて、結構前から室井くんの事教えてもらってたの。」
だから室井くんの趣味とか好きなものとか教えてもらってて、なんとか室井くんと会話しようとしたの、と佐藤は続けた。
「ふーん、だからあんな仲良いいんだ」
「…そうって、あ!内館くん待たせてる!い、いこ!」
「だーめ。」
暴露しまくって恥ずかしいからってこの場から逃げようとするけど
俺が許さない。
逃げ道を片手で塞いで行き場をなくす。
いくら相談相手の友達でもまたあいつの元にいってあの笑顔をみせるなんて
考えただけでイライラする!
俺自身こんな短気だと思わなかったけど。
まぎれもなくこいつのせいだな…
「え」
「佐藤がラーメン屋で食う相手は俺。」
それを言った瞬間佐藤はぽかんと面白い顔をした。
ぶはっ、だらしない顔。
「それと、もうウッチーに相談しなくていい」
「え、なん…」
「これからは俺が教えるし、佐藤の事俺も知りたいし。」
「!!!!そ、それって」
「ほら行くよ。」
佐藤の手を取り指を絡めてリードするように歩き出す。
意味をわかってるのか分かってないのか繋がれた手と俺の顔を交互にみる佐藤。
チワワみたいで可愛くてふふっと笑うと
また飽きもせずに佐藤は赤くなった
「佐藤は何ラーメンが1番好き?」
「え、あ、と、とんこつ!」
「ははは、奇遇。俺も好きだよ」
…その嬉しそうな可愛い顔も、騒がしい声も、佐藤自身も、
ずっと隣に置いておきたい。
END.
長い間続きを書けずに待たせてしまい申し訳ありません( ;∀;)
更新もままならなかったのにそれでも覗いてくださってるたくさんの方がいたのでびっくりしてます!笑笑
変わらず亀更新ですがよろしくお願いします。
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