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俺は、彼の後ろ姿ばかりを見ていた。
と言うより、焦げ目がつくかと心配されるくらい、彼の後頭部に視線を注いでいたと言った方が正しいかも知れない。
彼は少し長めの髪の毛を目が覚めるくらい、鮮やかな赤色に染めていた。
赤い髪なんて、東京のしかも音楽系専門学校や服飾関係の学校の生徒が多く住むこの辺りじゃ、別段珍しくも無いが、俺にとって、彼の赤髪は特別だった。
色と言えば、小中高の美術や図工の時間で触れた程度の俺の乏しい色彩知識や感覚から見ても、彼の赤は美しいと思えた。
暗すぎず明るすぎず、朱でも、紅でもない。
正にに"赤"と表現するに相応しい。
もちろん染めているのだろうが、元より赤髪であったと言われても疑い様がないくらい、彼の染髪は徹底的で、生え際から本来の髪色が覗いていると言う事は皆無に等しかった。
それは同時に髪の毛を虐め抜いていると言う事だろうが、その割に痛みが少なく、うねりなんかとも無縁の秋雨の様に真っ直ぐなその髪は、彼の気怠い歩みに合わせて揺れる度、サラサラと心地よい音が聞こえてくる様な気さえする。
何故、こんなにも彼の赤髪に魅了されたのかは、自分でも解らない。
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