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第二章 秘密(20)
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黙って俺の告白を聞いていた西野は、話が終わると、
「そんなにいろいろ知ってたんだ」
とつぶやいた。気を悪くしたふうではなかった。そして、
「俺、海音寺とは寮移ってから、全然会ってないよ。もともとつき合ってたとかでもないし。
海音寺って一見気難しそうだけど、打ち解けると、意外と気さくで、フランクなところあった。
なんか部屋で一緒に勉強してたときだったと思うんだけど、すっきりさせたいから抜いてくれない?俺もお前の抜くし、みたいなこと言われて、それがなんかすごい当たり前みたいにさらっと言うから、ああ、みんなそんなことしてんのかなって俺、勘違いしちゃって。
俺、貞操観念とか倫理観とかゆるいのかもしれないけど、人に迷惑かけてるわけじゃないし、ああいうことして何か問題になるとか全然思ってなくて。
菅原たちが来たときも、溜まってるんなら抜いてあげてもいいかな、とか軽く考えちゃって、だから、寮監さんとかから怒られて、思ったより大事なんだって、初めて気が付いたんだ。
海音寺も、あのあと、なんかしらけちゃったのか、もうこういうことやめようって言われた。だから、もう会ってない」
あらためて西野本人からそんな話を聞き、初恋もまだで、性的な経験も全くない俺にはよく理解できない感覚だなとは思ったが、そのために、俺が西野に抱いていた、無垢で純粋な印象が変わってしまうことはなかった。
西野は誰かに、未だ、その心までは触れさせてはいないのだと漠然と感じたのだ。
いつの間にか、猫たちは姿を消していて、俺たちは藤棚のベンチの下、ふたりきりだった。
月明かりの下、さっきの涙でいつもよりしっとりと黒く濡れた西野の睫毛が、白くきめ細やかな頬に深い影を落としていて、あらためて俺は、西野の美しさに見惚れた。
セイレーンの歌声に引き寄せられる船人、と菅原は自分たちをたとえたが、わかる気がした。
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