アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
249
-
微妙に盛り上がった夕食が終わり、残った料理を土産代わりに持たされた幸が玄関に立つ。
駅まで送ってやると言ったけれど断られ、俺は少しだけ不満だ。
これでも幸には感謝しているんだ。課題を手伝ってくれたこともだけど、今までくれたアドバイスや、なんだかんだ言いつつ傍にいてくれたことを。
幸は大したことじゃないって言っていたけど、俺には絶対にできないことだから、本当に感謝している。
「ほんじゃ、また明日な。俺、明日は仕事あるから途中までやけど」
「そっか。大変だな、お前も」
「なんなん?ウサマルが俺の心配してくれるん?やーさしい」
にやにやと口元だけで笑って、けれど目は穏やかな感じ。そんな笑い方をした幸が、妙に気にかかる。どこがとは断言できないけれど、何か異変を感じる。
「幸。お前、なんか変じゃないか?」
「ん?変ってどこが?」
「どこが……どこ、だろう。わかんないけど、やっぱり変だ」
返ってくるのは首を傾げ、不思議がった顔。俺も自分自身、何に違和感を感じたのかわからず、口を噤んだ。
「さては、俺が帰ってまうの寂しいんやろ?うーちゃん可愛いとこあるやん」
「なっ、バカか?!寂しいわけないだろ!」
「ほんまに?素直になり。寂しいから泊まってくれってお願いしてくれたら、3人で寝たるで」
「絶対に言わない!言うわけない!!」
散々に俺をからかった後、幸はリカちゃんに向かって軽く頭を下げて家を出て行った。一気に静かになった部屋で、今からはリカちゃんと2人だ。
「なんか、すげぇ疲れた。頭が痛い」
床に崩れ落ちた俺が呟けば、それを見たリカが苦笑いを浮かべる。
「慧君にしては、真面目に勉強したからかもな」
「……それ一言多くないか?」
「切羽詰まるまで課題を放置した報いだろ」
俺を咎めるリカちゃんの指がこめかみに触れ、優しくマッサージをしてくれる。くるくると撫でられ、その気持ち良さに目が自然と閉じる。
「なあリカちゃん、帰るときの幸、なんか変じゃなかった?」
「変って例えば?」
「わかんないけど。なんか、微妙に緊張しているような、そんな感じ」
笑っているんだけど笑っていないようで、落ち着いているんだけど落ち着いていないような。言葉で表すには、あまりにも難しい感覚に、どう伝えればいいか見つからない。
するとリカちゃんは、こめかみを押していた指を後頭部へと移動させた。
ソファに足を開いて座るリカちゃんと、その足元に腰を下ろした俺。後ろへと身体を預ければ、ソファの柔らかさの中に、リカちゃんの着ている部屋着の感触が混ざる。
「俺に聞かれても、普段のあいつを知ってるわけじゃないからね。慧君がそう感じたのであれば、そうかもな」
頭皮を揉むように指が動き、軽めの圧がかけられる。気持ちいいと言う代わりに、俺の口からは深い息が出た。
「でも、蜂屋が自分から言わないなら、それが答えなんじゃないのか?いくら友達でも、聞かれたくない話だってあるだろうし」
「それは……っん、そう……だけど」
「それとも明日、蜂屋の働いてる店に行ってみる?その時間なら俺も仕事が終わってるし、慧君が可愛くお願いしてくれるなら、連れて行ってあげる」
幸の働いている店。多分、一生行くことのないそこに、少しだけ興味はある……けれど。
おそらくギラギラしたやつが働いていて、ギラギラした女がたくさんいるだろう店。そんな場所にリカちゃんを連れて行ったら。
そんなの、嫌な予感しかしない。
「嫌だ、絶対に行きたくない」
首を振って拒否する俺に、リカちゃんは背後から問いかける。
「でも気になるんだろ?」
「なるけど。でも場所わかんないし」
ふるふると首を振る俺に、リカちゃんは動くなと制してマッサージを続ける。少しだけ痛いのは、それだけ脳が疲れているからかもしれない。もう考えるのは休憩しろって、きっとそう言っているんだ。
マッサージを終えたリカちゃんの指が耳元へと移動する。その輪郭を辿って耳朶に触れ、くりくりと揉んで弾く。
「べっ、つに……あ……俺が行っても、何もできない……んんっ……し」
ああ、ぞくぞくする。触られたところから痺れて、それが背筋を通って全身に伝わっていく。
例えば綿毛の先でくすぐられているような。
例えば微かな電流を流されているような。
もっと、もっと。続きが欲しいって思わせる指の動きに、すっかり力の抜けた俺の身体を支えたリカちゃんが囁く。
「慧君、もっとしてほしい?」
答える代わりに手を伸ばして催促すれば、リカちゃんが身体を庇ませる。言葉にしなくても伝わったお願い。
触れた唇はしっとりと柔らかく、入ってきた舌はとろりと蕩けて。
そして、無性に甘く感じた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1066 / 1234