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学校が終わり、コンビニに寄ってATMでお金をおろす。適当にお菓子を買い込んでマンションに戻れば部屋に入った途端にスマホが鳴った。
ディスプレイに映る表示は恒兄ちゃんだ。
「もしもし」
『慧。今いいか?』
電話口からは恒兄ちゃんの声しか聞こえてこない。どこか静かな場所からかけてきたんだろう。
『来週にある三者面談なんだが』
正直、やっぱりと思った。
用がなければ電話してこない恒兄ちゃんだ。世間話しようと思って…なんてありえない。
「別にいいよ。俺1人で平気だから」
『いや、そうじゃなくて……その日父さんが行くから』
「………は?」
待て待て。今なんて言った?父さんが来る?
ってか、なんで社長じゃなくて『父さん』って呼んでんの??
予想外すぎる内容に言葉を失うけれど、恒兄ちゃんは気にせず続ける。
『自分が行くって言って聞かなくて。本当1度決めたら頑固なのは兄さんも父さんも、もちろん慧も同じだ』
ため息まじりに言う恒兄ちゃんから、少しだけ違和感を感じた。なんていうか…うん、柔らかい感じがする。
「恒兄ちゃん何かあった?」
『何かって何が?』
「わかんないけど……なんか前と変わった気がする」
声を殺して笑うのが聞こえる。恒兄ちゃんが笑うなんて本当に珍しい。
『確かに変わったかもな。俺も父さんも変わらずにはいられない』
「どういう意味?」
『父さんに会ったらわかる。俺は初めて父さんが言い負かされるのを見たけど、笑いを堪えるのに必死だったから。悪いけど仕事に戻る…また連絡する』
ドアの開く音が聞こえ、今度は少し周りが騒がしくなる。
電話を切る前に、恒兄ちゃんが早口で、小さな声で言った。
『慧。俺は父さんがどう言おうとお前のフォローをするって決めた。今まで素直な息子だった俺の初めての反抗だ』
「恒兄ちゃん、それどういう意味?」
『恋と愛の違いを聞いた時の父さんの顔……思い出すだけで笑ってしまうよ』
じゃあなと言って恒兄ちゃんは電話を切る。一体なんなんだ?
いきなり何かが弾けたような恒兄ちゃん。いきなり面談に来ると言い出した父さん。
社長と呼ばずに父さんと呼んだ理由。
そのどれもが謎で、考えてもわからないままだ。
拓海の件が解決したと思ったら父さん。
一難去ってまた一難……。
でも、この時の俺はすっかり忘れていたんだ。
1人悶々と考えている人がいるってことを。
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