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「甘やかし過ぎた俺が悪いんだけど調子に乗ったお前も問題だと思うんだよ」
「リカちゃん何言ってんの?」
「お互いのこと見つめ直すいい機会なのかもな」
雰囲気、言葉、態度に視線。その全てで俺はお前を突き放す。
「意味わかんないんだけど」
「わかってるくせに。ちゃんと言葉で聞きたいなら言ってやるよ。慧、俺と………」
続きを言おうとして声が出ない。言いたくない、嘘でもこんなこと言いたくない。
それがお前の為の言葉だったとしても絶対にそれだけは言いたくないんだ。
「俺と、なんだよ」
慧の目が言うなって訴えてくる。それがさらに俺を追いつめて、とうとう耐えきれなくて顔を背けた。
ほら、まだ俺は弱い。
「俺となんだって聞いてんだろ」
本当はもっとハッキリ言ってやるべきなのはわかっている。曖昧じゃなく、ちゃんと言葉にすべきなのだろうけれど俺にはどうしてもその言葉が言えない。
どうしてもそれだけは嫌だって叫ぶ本音を抑え、代わりの言葉を探した。
自分を殺すのは得意なはずで、いつもそうやって過ごしてきたのに…こんなにも辛いなんて初めて知った。
俺は嫌だと、やめてと全身で訴えてくるお前をわざと傷つける。
初めてお前に吐く嘘がこんなことだなんて皮肉すぎる…けれどごめん。
「もうさ、離れる?
お前にとって俺って関係無いんだったらお互いに邪魔なだけだろ。そんな無意味な関係いらない」
慧が何かを言っているのを遠くで聞きながら俺は目を閉じた。
もう何も見たくない。
慧が去った後のことは覚えてなくて、気付けばケースの中のタバコが無くなっていた。
新しいのを入れ替えないと…と思ってやっぱりやめる。もうこのケースを使う資格が俺にはない。
大事にしていたはずなのに。傷つけないよう、汚さないよう、壊れないよう気をつけていたはずなのに…それなのに見えない傷がたくさん付いていたケース。
やっぱり俺には何かを大切にすることも傷つけずに守ることはできない。
俺はお前の選択肢になりたいんじゃない。何かと比べられて選ばれるなんてもう嫌だ。たとえ、どんなことがあっても最後の最後に俺のところに帰ってきてほしい。
俺はお前の終着点になりたい。
だからお前が悩んで選んで見つけて…そして俺の前に立った時。その時には全部伝えるから早くここまで来て。
10年探し続けてきた理由をやっと見つけたんだ。
今は使えないケースを大事にしまい、俺はベッドへ潜り込んだ。本当は不安で押しつぶされそうなのをごまかすよう強く目を瞑る。
浮かんできた後ろ姿に必死に手を伸ばし、縋ろうとした背中が小さくなっていく。
そうやって全く眠れないまま朝を迎えた。
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