アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
767
-
学校のいたるところで聞くリカちゃんの話。勉強を教えてもらったとか、届かないところの物を取ってもらったとか、相談に乗ってもらったとか。教師なんだから当たり前だって思いつつも、その後に付く一言が俺のイライラを膨らませる。
「本当、リカちゃん先生のクラスになれて良かったぁ。俺もうリカちゃん先生になら何されてもいいや!!」
握っていた紙パックからジュースが飛び出て俺の手を汚す。それを拓海がハンカチで拭こうとして、持っていないことに気づいたのが着ていたセーターの裾で綺麗にしてくれた。
みんなして言う「リカちゃんのクラスで良かった」「リカちゃんが英語の担当で良かった」というセリフがすっげぇ腹立つ。俺がどれだけそれを望み、そうじゃないと知った時にどれほどショックだったか…今でもクラス分けを考えたヤツを殴ってやりたいぐらいだ。
握りしめた紙パックを俺から奪った拓海が言った。
「なあ慧。そんなに気にしなくてもリカちゃん先生なら相手にしないって」
「当たり前だろ。したら絶対に許さねぇ。問題はそこじゃねぇんだよ」
首を傾げる拓海に俺は苛立ちを抑えるため壁を蹴った。地味に痛くて呻きながらも耐える。
「アイツ相手がいるって言ってんのになんで狙われてんのかわかんねぇ。隙があり過ぎる」
「リカちゃん先生に隙…俺はないと思うけど」
そう答える拓海はわかってない。一応は恋人がいるって公言してるリカちゃんが狙われる理由、それはもしかしたら可能性があるかもしれないって思わせてるからだ。
優しくされて、ちょっと近くなったから自分にも可能性があるんじゃって勘違いしたヤツがリカちゃんを好きになる。同性だし、そこには憧れもあるんだろうけど…それが憧れか好意かを見極めるのは難しい。
特にさっき聞こえた「何されてもいい」なんてどう考えても憧れなんかじゃない。リカちゃんがする何なんて『ナニ』しかないのに…それを日々されてる俺に聞かれるなんて宣戦布告みたいなもんだ。
俺の苦悩など知らない拓海はのんびりした声で、絶対に無理なことを口にする。
「そんなに気になるならさ、先生はもう売約済みだって首輪でも付けたらいいじゃん」
「そんなの無理に決まってんだろ…一応あれでも教師なんだから」
「まあそうなんだけど。でもそうやって毎日イライラしてて楽しい?今年で高校生活も終わりなのにもったいない」
拓海の言う通りなんだけど…俺だって出来るなら首輪つけて繋いでおきたいけど。けれどそんなことは絶対に出来ない。
リカちゃんがしていることは仕事で、誰かに好かれるのは仕方ないこと。どうしたってそれは止められない。
何か俺のものだって目印でも付けられたらこのモヤモヤも少しはマシになるのかもしれない…そんなことを考えながら廊下で拓海と別れ、それぞれの教室へと向かう。
興味のない話を延々と続ける担任を見て俺はハッと目を見開いた。
リカちゃんが持っていてもおかしくなくて、恋人の存在をアピール出来て俺でも用意できるもの。
去年は悩みに悩んでケンカまでしたリカちゃんの誕生日プレゼントを今年はすぐに思いついた俺は学校が終わってすぐに電話をかける。
『お前から電話なんて珍しいな…どうした?』
数コール目で出た相手に向かって俺は挨拶もなく告げた。
「オーダーメイドのネクタイ作れるとこ教えて!!」
仕事柄ネクタイを何本も持っていて、きっとそういうことにも詳しそうな人。そういうのをプレゼントした機会がありそうで、でもってリカちゃんに告げ口なんかしない、俺の味方だって言ってくれた人。
その人がゴホンと咳払いをした後に呆れた声で返す。
『…ちなみに父の日はまだ先だし私の誕生日は冬なんだが』
「誰があんたにやるって言ったんだよ。俺は店を教えてくれって言ったんだ」
答えた俺に電話の相手、父さんが「最近お前のことがよくわかってきた」と呟いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
767 / 1234