アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
472
-
***
ウサギとの電話を切った後、俺は服を着直して部屋を出た。向かう先は親父の部屋だ。
時間が時間だと思いつつも躊躇うことなく扉を叩く。
「はい……って理佳か。こんな時間にどうした?」
まだ寝ていなかったことに安堵し、中に入り込んだ。
「ちょっと頼みがあるんだけど」
「頼み?」
「明日の朝に帰ることにしたから上手く時間稼ぎしてほしい」
「………は?」
「なんとか由良をごまかしてくれればそれでいい。後の事は何とかするから」
ウサギと話していて募った『傍にいてやりたい』という気持ち。アイツは今、1人きりだと思っている。
でもそれは違う。いつだって俺がいる。
それに……ウサギは知らないだけ。知ろうとしていないだけだ。
帰るから協力しろと言った俺を親父はジッと見て諦めたように肩を落とす。
「お前な…由良の面倒臭さ知ってて言ってるのか」
「誰よりも俺が1番知ってる。それでも帰る」
言い切った俺に親父は白けた視線をよこす。
「例の恋人とやらに帰って来いとでも言われたか」
慧はそんなこと絶対に言わない。
思ってても言えないヤツだ。だから俺が気づいて俺から動かないといけないんだ。
今はまだ甘やかしてやりたいって思う俺は無責任だってわかっている…それでも止められない。
「親父はわかってねぇな。そんなんだから母さんに捨てられんだよ」
「うるさい。捨てられたんじゃなく呆れられたんだ」
たいして変わらないと思うけど。
そう言いたいのを堪え、俺は自信たっぷりに笑った。
「言われる前に行動すんのが恋愛の極意。相手の1歩先じゃなく10歩先にいなきゃな」
「どうして息子に恋愛を語られるんだ……で?具体的にどうしろと?」
渋々ながらも黙って俺の計画を聞く。
頭の回転が速い親父は途中から眉間を押さえ、さらに顔を顰めてしまった。
「お前は本当に無茶な事ばっかり言って……。
もし成功しなかったらどうする」
成功しなかったら?そんなの答えは簡単だ。
「するに決まってんだろ。
由良に負ける俺を想像できる?」
答えない親父。その沈黙はもちろん肯定。
「1つだけ教えてくれ。お前にそこまでさせる相手はそれほど価値のある子なのか?」
親父はウサギと過ごし始めてからの俺を知らない。
アイツが俺をどれだけ変えてくれたのか、それが俺にとってどれほど特別なのかを知らない。
だからこんな考える余地もない質問をする。
「価値とかそういうの考えたことないな」
価値とか理由とか意味とかそんなもの必要ない。
「俺はアイツに嘘はつかない。1人になんてさせない。
アイツが俺の為に生きろって言った時から俺はアイツの為だけに生きるって決めたから」
親父が驚いたように固まる。
それも仕方ない…けど、こうも驚かれると俺ってそんなに節操の無い息子だと思われてたのかと、過去の自分を情けなく思った。
それも全部過去。今の俺はアイツだけのモノだ。
「帰ったら会わせてやるよ。でも、可愛いからってうちの慧君に手出したら容赦しねぇからな」
俺の冗談に親父は目を見開き、数秒して呆れたように笑った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
472 / 1234