アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
582
-
右隣に隠れて舞い上がってる歩、左隣に明らかに舞い上がってる拓海。3人でブラブラしながら途中にあった店でアイスを買って食べる。
何種類もある中で俺が読めたのはバニラ、チョコ、ストロベリー…果物の名前ならなんとか読めたけど発音もわかんないしチョコを選んだ。
ちなにみ拓海は「コレ!」と指を指して言う反則技を使っていた。
ベンチに座ってぼんやりとアイスを食べて。
色んな店があるけど服のサイズもよくわかんないし、雑貨屋に入っても何に使うヤツか読めないし。早く日本に帰りたい。
『外国行くつもりないから英語なんか必要ない』
その気持ちがより強くなった。
「俺あそこの店行ってくる!」
好奇心の塊である拓海が服屋に走っていく。
追いかけるのも面倒で、隣に座る歩を見ればまだクマを見てニヤニヤしていた。
すげぇ退屈…集合時間までまだ余裕がある。どうしようかと読めもしないパンフレットを開いた時だった。
「ママー!!」
間近で聞こえた声は子供の泣き声で、視線を上げればすぐ近くにいた男の子がママをずっと呼んでいる。
まわりをキョロキョロ見ては泣き、ママ!ママ!と叫んで可哀想だ。
男の子とバッチリ目が合った。なぜか俺に向かって走ってくる。
「Me too!」(僕にも!)
「は?」
ペラペラと英語で俺に向かって訴えかけてくる少年。子供の癖に本物の英語で、しかもかなりのスピード…ここは外国なんだから当たり前だけど俺にとってはレベルが高すぎる。
「Please give me ,too!」(僕にもちょうだい!)
「だから、わかんねぇって」
「Let me get a bite!」(1口ちょうだいね!)
言うなり男の子が俺のアイスを奪った。パクンと一口食べて嬉しそうに笑う。
「何すんだよ!」
注意すればその大きな目にみるみる涙が溜まり、唇が震え出す。
泣く寸前…ここで泣かれたら確実に悪いのは俺。たとえアイスを取られたからって高校生が子供を泣かせるのはマズい。
「な、泣くなって!あげるから、食べていいから!」
「うぅ……うっ、」
「ごめんってば!!えっと…泣くなって英語でなんて言うんだっけ?!」
隣の歩に聞こうとすればいない。そういやさっきから何も言ってこないと思ってたら後ろの方にある喫煙所でこちらを見て手を振っている。
完全に逃げた歩。押し付けられた俺。
足元で今にも泣きそうな男の子。
泣きたいのは俺だ。自分で苦労して買ったアイスを奪われ、迷子を押し付けられ、そしてその迷子を泣かせた悪いヤツに思われてるんだから。
「ひっ……う…ママァ……」
少年の目から大粒の涙が零れた。
始まりそうなギャン泣きに俺の焦りはピークを迎える。
「You've lost your Mom?」(ママとはぐれた?)
俺の真後ろから聞こえた声。
ソイツは男の子の前まで来てしゃがみこみ優しく頭を撫でる。
そして何かを話しかけ小指を立てた。男の子がそれに自分の指を絡め、やがて離れる。
俺にはわからない言葉も子供には伝わり涙が引っ込み笑顔になった。男の子を抱き上げたソイツが俺を振り返る。
「慧君ってば弱い者イジメは駄目だろ。そんな悪い子にはお仕置きしちゃうぞ」
どこから見てたのか唇の端を釣り上げてリカちゃんが笑う。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
582 / 1234