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【カラ松視点】愛しさ5
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一松を追いかけるうちにお互いよく分からなくなって、全力ダッシュでなんともスタイリッシュに帰宅。
「いや全然スタイリッシュじゃないよ」
「フッ、爽やかな汗を」
「おそ松兄さんは? 一緒に銭湯行ったはずでしょ?」
「あぁ、先に帰ったとばかり思っていたんだが……」
きょろきょろとあたりを見回すも、そこにおそ松兄さんの姿はない。
ただ苦しそうに肩で息をする一松がばつが悪そうにしていた。
「なにか知ってるのか一松」
聞いてみるも、今の一松は息をするので精一杯といったところか。
「もういいよ。どうせおそ松兄さんのことなんだし、どっかで一杯引っかけてるよ」
「そうか」
チョロ松はほかの兄弟たちとポーカーをしているようで、トッティに呼ばれて居間に戻っていった。
おそ松が俺を放っておいて飲みに行くなんて変な話だが、チョロ松がそう言うんならそうなんだろう。
それよりも一松だ。
「一松、さっき、銭湯の前で俺に何が言いたかったんだ?」
さっき一松は俺に何かを言いかけてやめた。
気になって仕方がない。
一松の肩をつかみ、顔をのぞき込む。
「は、離せクソ松!」
「だめだ。ちゃんと話してくれるまでは逃がさないぜ〜?」
「離せ……つってんだろ!」
「――ぐはッ!」
腹に一発、一松渾身の一撃がクリティカルヒットしてしまった。
「な……なぜ」
「来いクソ松」
「ま、まて! 悪かった! 一松!」
一松にパーカーのフードを引かれて、無理やり外に出される。
玄関の戸が閉まると一松は投げるようにして俺から手を離した。
「い、一松! もう、むやみやたらとお前には触れないから殺さないでくれ!! 頼む!」
「何言ってんの」
「え?」
「こうでもしないと真面目な話できないからしてんだけど」
「真面目な話?」
一松は頷いて、蚊の鳴くような小さな小さな声で、しかし確かに「ごめん」と謝った。
「銭湯でのことと殴ったこと」
「あ……あぁ」
「それと、俺からのオネガイ聞いてくれる?」
珍しく大人しい一松は、上目遣いで俺を見つめた。
「もちろんだ! 愛しいお前のため、なんでも聞くぞ」
「じゃあ、その……」
口ごもる一松は、何度も口を開くが声は発しない。
言いたいけど、自身の何かがそれを邪魔している、そんな感じだった。一松の性格がそうであることも関係しているのだろう。
そうして、言えない自分自身に苛立っていることもはっきりと分かった。
だから俺は一松の頭を撫でて言った。
「お前のペースでいいんだ。いつでもいい。話せるようになったら話してくれ」
そのまま立ち去ろうとした俺の腕を一松がつかんだ。
「ん?」
話してくれるのか?と訊こうとしたとき、その口に柔らかいものが触れた。
一松の、唇。
しかしそれはすぐに離れていく。
「ほかの奴と2人っきりで銭湯とかやめて」
「……おそ松だぞ?」
「それもだめ。俺以外禁止」
「……わかった」
満足気に微笑んで家の中へ入ろうとする一松。
俺はその一松にされたキスの感触をたどるように自分の唇を指でなぞっていた。
「何その顔。物足りない?」
「え……っ」
一松はすぐに俺のとこへ戻ってきて、またキスをした。
今度は長くて、ずっと甘いやつ。
「うーわー……」
どのくらいかキスをしていて、やっとお互い離れたのは長男のドン引き声が聞こえたからだった。
「お、おそ松!」
「お前らさぁキスすんのは別にいいけど、家の前ですんなよな」
「すまない」
おそ松の手にはコンビニ袋と、もう一方の手に缶ビール。
顔が少し赤いところを見れば、チョロ松の言う通り、酒を飲んでいる。
おそらく手に握った缶ビールを飲みながら帰ってきたんだろう。
てことはコンビニ袋の中身も缶ビールとつまみといったところか。
「それ俺たちの分もあるわけ?」
一松が訊くとおそ松は、おう、と答えた。
「さぁて飲むぞー!」
気分がいいのかおそ松は走るようにして中に入ろうとしたが、なにせおそ松は酔っている。
缶ビール1本で?と思うかもしれないが、酒に弱いのは六つ子共通のことだ。
そして、酔ったおそ松は俺とぶつかって、そのままおそ松に押し倒される形で倒れる。
そのとき、おそ松の唇が俺の唇に触れてしまった。
目の前にあるおそ松の眉がピクリと動いたのがわかった。
そして全部思い出した。
俺は過去におそ松とキスしている。
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