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それから少しの間、2人が言い合う声が聞こえた。言い合うと言っても、鬼塚は冷たく言葉を発するだけだったけど。
本命がいることを、否定しなかった。
それが一番辛かった。
「おっ、帰るみたいやで」
ぽそっとサンタがつぶやく。
女の人の怒りで大きくなった足音が、振動になって床が揺れる。下の階の人に注意されるのはこっちだってのに。
バサバサとものが落ちる音が聞こえるのは、きっと怒りに身を任せて靴箱の上の靴べらやらなんやらを投げ落としているからに違いない。
玄関の扉が勢いよく閉まると、ようやく静けさが戻った。
「あれ?りゅーくんも出ていったんかな。」
「⋯⋯。」
「めっちゃ静かじゃない?」
「⋯。」
「何、どしたん?もう出てってもええと思うで?」
サンタは、俺が鬼塚を好きなことに気づいてる。
「⋯⋯ねぇ、知ってたの?」
「何が?」
「⋯お、鬼塚に、好きな人いるの」
「あー⋯さぁ。どうなんやろな。知らん。」
サンタは俺の後ろから手を伸ばし、ゆっくりクローゼットを開ける。
急な光に目が慣れず、しばらくチカチカした。
下を向いて、目を擦ってみたが、なぜだかそれから顔を上げられなかった。
サンタの顔も、2人がキスしたこの部屋も、見る気になれなかった。
俺はいつまでここにいられるだろうか。
多分、もうすぐ終わる。
「あー⋯⋯俺ん家くる?」
「は⋯?」
へらっと笑いながら、少し頭を傾けて言う。
「いや、結構な修羅場見てもうたし気分転換にでもどうかなと思って。美味しいもんもあるし、遊べるもんもあるし、どう?」
「⋯。」
サンタが柄にもなく気を遣っている。
そんなに顔に出てたかな、と一度深く息をして心を落ち着かせた。
「あ、りがと⋯でも、そんな気分じゃない」
あたりを見渡す。自分の部屋なのに、もう既に他人のものみたいだ。
「⋯っていうか、サンタは結局何しに来たの」
「ははっ。内緒。」
「なにそれ」
目線を逸らされた気がした。なにかを隠すみたいに、不意に出た作り笑いで誤魔化される。
「⋯で?1人になるけど寂しないん?」
「別に。寂しくない。」
あぁ。ダメだ八つ当たりしてしまう。サンタは気遣ってくれてるだけなのに。最低だ俺。
「まぁまぁそんな凹まずに。⋯いつでも話し聞いたるから。な?」
サンタは、俺の頭をぽんぽんと優しくたたき笑ってくれた。
俺は、もっと友達を大事にしなきゃいけないな。
「さて、俺は家帰って寝るとするか⋯」
部屋の扉を開けながら呟き、俺もサンタの後をついてこの部屋を出て気晴らしにテレビでも見ようかなと思った。
が、ゴツン、と顔面にサンタの背中がぶち当たる。
急に止まるからぶつかっただろ、と言おうと思って顔を見上げると、何やら様子が変だった。
「あはっ」
乾いた笑いを変に思って、サンタの目線の先に目をやった。
「ひっ!!」
思わず悲鳴が上がる。
そして咄嗟にサンタの影に隠れた。
もう、本っ当についてない。今日は厄日かってくらい最悪な日で。
「⋯何でお前が居る?賛田」
今、俺とサンタの目の前には、
それこそ鬼のような形相をした鬼塚が立っていた。
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