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見ないように視線を逸らしていた鬼塚の顔がいつの間にか目の前にあって、反射で目を瞑ってしまう。
ぎゅっと力を入れた唇に、微かに息がかる。
口があたる、と身構えたが、5秒程経っても何も起きないため恐る恐る目を開けた。と同時に、俺の真後ろにある扉にゴツンと頭を打つ鬼塚。
現状が理解出来ず、驚いて目を見開くも未だに理解できない。俺がいつなんで襲われたのか、そもそも襲うってなんだどういう風にだ。
「・・・んなに、」
真横から聞こえる、鬼塚らしくない弱々しい声。え、と聞き返す前に、確かに聞こえた。
「・・・そんなに嫌かよ。」
身体が、離れていく。
いつの間にか強ばっていた俺の肩から、スっと離れていく大きな手。リビングまでの廊下を歩く背中を見て、少し安心した。
でもあのまま、もし止められてなかったら何されてたんだろうか。襲ったって言ってたけど、てっきりキスされるのかと思ってしまった。自分の自意識過剰な勘違いに、恥ずかしさで頭が沸騰しそうだ。
顔を手で覆って恥ずかしさを紛らわしていると、いつの間にか振り向いていた鬼塚と目が合った。
リビングに向かった後、立ち尽くしている俺を見て舌打ちをしこちらへスタスタとUターンしてくる鬼塚を視界に捉えながらも、突然の事で動けずにいる足。
混乱する俺の腕をなんの躊躇もなく掴み、お前も来いと言わんばかりにリビングへと引っ張る。
「え、あの、なに・・・っ、」
「寒ぃだろが。こっち来い。」
いや、確かに寒かったけども鬼塚が俺をあそこに追いやったんじゃん・・・とは口が裂けても言えない。
「お前飯食ってねぇだろ。」
「あ・・・うん。」
今起きたばっかりだしね。だからあんまり頭が回らない。回らないせいか、鬼塚がなんか、いつもと違う。
リビングの扉を開け、椅子に座ってろと目で命令される。わけも分からず大人しく座り、カーテンの隙間から見える鳥や朝日を眺めていたら、キッチンから何やらいい香りがしてきた。
目を瞑り香ってくる匂いを嗅ぐと、目の前でコトンとお皿の置かれる音がした。目を開くと、お皿に乗せられたスパゲティが朝日に照らされキラキラと光っていた。
「・・・なっ、これは、」
「ナポリタン。」
「なぽ・・・」
何で、ナポリタン?鬼塚が作ったのか・・・?いや、それよりこの食えと言わんばかりに目の前に置かれたナポリタンは誰が食すのか。流石に朝から濃い味のスパゲティはきついものがあるぞ。
悶々としていると、俺の真向かいに座った鬼塚は皿に乗せられていたフォークを持ちだし、クルクルと細いパスタを絡めていく。
まあそうだよな。鬼塚が作ったんだし。
いやでもそれ普通目の前で食べるか?俺が朝ごはん食べてないの知ってるのに。
今のところ疑問しかない鬼塚の行動に戸惑っていると、フォークの先が俺の口へ向けられた。
「食え。」
「・・・・・・え?」
「口開けろ。」
・・・いや、寝起きで頭働かないんだって。
ナポリタンは、物凄くいい匂いで物凄く美味しそうだけども。もうどこから何がおかしいのか分からなくなってきた。
「あの、2・・・5分待って」
「あ?」
いやおかしいおかしい何だこれ。何日かぶりに帰ってきたかと思えば朝ごはんにナポリタンって、しかもアーンで食べさせるって何。鬼塚が何考えてるのか分からないのはいつもの事だけど。
この「早くしろ」って顔で平然と男にフォーク咥えさせようとしてるのは何故ですか。
「口、開けろ。」
二度言わすな、という顔でフォークを口に近付けてくる。
もう余計なことは考えない方がいいと腹を括り、恐る恐る口を開く俺。もう、超恥ずかしい。
「ん・・・っ、」
・・・あ、美味しい。
「お、おいしい・・・です。」
恥ずかしさと美味しさを噛み締めながら言うと、「ん。」とだけ言い残しまたフォークにナポリタンを絡めていく。
俺が飲み込むのを待っているのか、じっと俺の顔面をガン見してくる。ねえそれ恥ずかしいからやめて。
ごくん、と飲み込むと、タイミングを測っていたかのようにフォークをまた俺の方へ向ける。
「開けろ。」
「ちょっと待って!?それまさか全部・・・」
「・・・開けろ。」
ねぇほんと、なんなのこれ。
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