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喉の奥で言葉が詰まる。
倒れた自転車片付けなきゃ、教室帰らなきゃなのに、
睨まれたまま体が動かない。
「...まぁいいや。」
男は怠そうにしてしゃがみ込み、
そっと、俺のブレザーに手を掛けた。
服の中に手が入ってく感触にビクッと体が跳ね、怖くて反射で目が閉じる。
「......チャリンッ」
...あれ、鈴の音?
てっきり脱がされるのかと...
恐る恐る目を開けると、鈴の音の正体はおそらく俺の胸ポケットから取ったであろう家の鍵で。
男の指にハマりくるくると回された鍵を、訳も分からず見つめるだけ。
「ワリ。今日鍵家に忘れてったからさ」
「......え?あ、はい。」
「つーことで、」
鍵をポケットにしまい立ち上がったあと、ニヤッと微笑んだ。
「今日帰ってこなくていいから。お前。」
「.........は」
「じゃ。」
その言葉に酷く傷ついたのは、きっと要らないものみたいに扱われたからなんだろう。
心に残った声はまだ冷たくて、彼女と話している優しそうな声とは全然違う。
俺は、ただの同居人。
それなのに何でこんなに悲しいんだろうか。特別な関係になりたいとか思ってない。
まずそんなに好きでもないし、性格悪いし。
それでも、帰ってこなかったらこなかったで寂しい。でもそう思ってるのは俺だけなんだろう。
俺にあんな事したのだって特に意味はなくて、
暇だったとか、気まぐれとかそんなんなんだろう。
......うん。
十分わかってるし。そんな事。
ため息を着くと同時にチャイムの音が鳴り響いて、急いで起き上がる。
今更急いだってどうせ遅刻だけど。
あーあ...どうしよう。
「で...俺は今日どこで寝ればいいの...」
倒れた自転車を起こしながら、
誰もいない駐輪場で一人、言ってもどうしようもないことを呟いた。
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